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【Thinking Time】㊷125㏄も原付に!? 生産終了と代替車両の“新基準”原付とは?

2025年11月に適用となる国内4次排ガス規制をガソリン原付一種はクリアできない
代替手段として検討されているのは、125㏄クラスの最高出力を制限した“新基準”原付を
原付一種として運用する案。どうなる原付一種!?

全国で485万人が利用する原付一種。78%が実用利用で、高齢者は42%も

原付一種の販売台数は右肩下がりが続いているが、それでもまだ全国で約485万人が利用中だ。そのうちの78%が通勤・通学、買い物、仕事といった実用利用で趣味性は低く生活必需品として認識・利用されている。60歳以上の高齢者が42%も占めているので免許返納も踏まえた代替手段が急務となっている。

かつてはバイクライフの入り口にもなっていた原付一種がいよいよなくなりそうだ。2025年11月に適用される国内4次排出ガス規制を原付一種ではクリアできないからだ。今回はこの問題について説明、考察する。

厳しい国内4次排ガス規制!50㏄には猶予期間があったが。
欧州(EU諸国)の規制であるEuro5と同等の国内4次排ガス規制はHC(炭化水素)を1/3に削減するなど厳しい規制値となる。バイクへの適用は昨年11月からだが、50㏄だけは2025年11月まで3年間の猶予期間が与えられている。しかし代替車両を間に合わせるためには、今年の年末から車両開発をスタートさせる必要があるという

排ガス規制クリアのため3つの手法が検討された

昨年の11月9日、自由民主党オートバイ議員連盟・勉強会の場で二輪業界団体から「二輪車車両区分要望」が提出された。そこには原付一種では国内4次規制をクリアできないこと、それにより原付一種を生活の足としている国民が乗り換えに困り、バイク販売店も売るものがなくなってしまうことなどがつづられていた。

そして、二輪業界の総意として、国内4次規制への3つの対応手法と採用案が説明されていた。

①現行の50㏄で規制対応 

これについては、50㏄の場合、触媒が機能する前にHC(炭化水素)の規制値を超えてしまい断念。

原付一種が国内4次排ガス規制をクリアできないのはマフラー内部の排気ガスを浄化する触媒(キャタライザー)の特性にある。触媒は300℃を超えないと浄化が始まらないが、50㏄は温度上昇に約240秒もかかり300℃になる前に有害物質のHC(炭化水素)規制値をオーバーしてしまう。125㏄クラスであれば要する時間は約70秒であり
規制値をクリアできるのだ

②排ガス規制対応しない

50 ㏄の最高速度を50㎞/hに制御することで国内4次規制の対象外にすることもできるが、加速・登坂能力ともに劣り、商品にならないと判断して断念。

③125㏄クラスの最高出力を原付一種並に制御して対応

125㏄クラスは触媒の温度が上がりやすく規制に対応できる。最高出力を4kW程度に制御して原付一種として運用させる。この3つ目の手法が採用され、適用モデルは〝新基準〞原付または新原付と呼ばれている。

125㏄を原付一種として運用するためには規定の改定や法改正が必要となる。警察庁は道路交通法を、国交省は道路運送車両法を、さらには軽自動車税の調整では総務省も関わってくるだろうし、〝新基準〞原付をどこに駐めるべきかという駐車問題も懸念される。これら中央省庁での取りまとめは経産省が担当するという。

2022年11月、日本自動車工業会二輪車委員会や全国オートバイ協同組合連合会(AJ)ら二輪業界団体は「最高出力を4kWに制限した125㏄を原付一種として運用できるようにしてほしい」と自民党オートバイ議員連盟・勉強会の場で要望した。実現のためには制度改定や法改正が必要となる。警察庁、国交省、経産省などの担当者を交えて議論が交わされた

さて、今回の動きについて少し考察してみたい。原付一種はいまやほぼ日本国内のみのラインナップであり、グローバル市場がメインの二輪市場で言えば、まさにガラパゴスだった。1986年に原付にもヘルメットの着用が義務化され、2006年には放置駐車取締りの民間委託があって販売数を落とし、排ガス対応など規制のたびにラインナップを減らし車体価格を値上げしてきた。

最高速度が30㎞/hに制限され、3車線以上の交差点では二段階右折が必要で二人乗りもできない。ほとんど自転車と変わらないような規制の中で唯一の特徴と言えば最も小さな自走モビリティであることだったが、これも免許不要の特定原付が登場したことでラストワンマイル需要のいくらかは失うことになった。

それでもまだ、今の日本には原付一種が必要だ。前述したように、生活の足として使っている高齢者や女性、さらには中山間地で通学の足として使っている高校生、こうしたユーザーの代替モビリティは結局間に合っていないからだ。

また、バイク販売店、特に個人が営んでいるような小さな販売店にとって、原付一種は新車販売やメンテナンス業務においてビジネスの中心を担っている。二輪市場を下支えしている個人販売店が売るものがなくなってしまえば、エントリー市場を一気に失って、国内4次規制が大きな市場の崖となってしまう。

バッテリーの性能を革新的に向上させる全固体電池の開発は着実に進んでいる。うまく行けば2030年代を前に二輪車への搭載も示されるだろう。そうすれば、原付一種のユーザーニーズは電動バイクが満たしてくれるはずだ。〝新基準〞原付はそれまでのつなぎに過ぎないかもしれないが、原付免許や普通免許で125㏄に乗れるという楽しみはユーザーのステップアップにもつながって、その先には一種と二種の自然な統合、新しい原付の未来が待っていることだろう。

環境規制への対応、カーボンニュートラルの推進という点において「原付一種は電動化」というムーブメントはあったが、製品ラインナップと充電インフラ網が整わず、第4次排ガス規制には間に合わなかった

125㏄クラスを原付一種として運用することのメリット・デメリットは?

メリット

選ぶ楽しみが増える
スポーツ車両や海外メーカーも?

車体の安全性が高まる
車体剛性やブレーキ性能などアップ

価格が抑えられる
グローバルモデルで安価に販売

下でご紹介する2台はホンダを代表する原付一種と原付二種のコミューターモデルだ。どちらもベトナム製で、安価なベーシックモデルもラインナップされている。新基準原付は、Dio110のようなアジアの安価な大量生産モデルをベースにする予定だ。原付一種と比べるとわずかにシート高が上がったり車重が増えるというデメリットもあるが、それ以上に下に挙げたようなメリットも多い。特に価格については既存の50㏄スクーターに近づけるようメーカー側もかなり頑張るのではないかと思われる。

<原付一種>Honda タクト・ベーシック(17万9300円)

アイドリング・ストップ機構を省き、ローシート(タクトより15㎜ダウン)の採用で足着き性にも配慮された原付一種のスタンダードモデル。コンビブレーキも採用されていて老若男女が安心して乗れるモデルだ

スペック:最高出力3.3kW(4.5PS)、全長×全幅×全高1,675×670×1,035㎜、シート高705㎜、車重78㎏、タイヤ前後とも80/100-10 46J

<原付二種>Honda Dio110・ベーシック(21万7800円)

Dio110からスマートキーシステムを省いたベーシックは原付一種に迫る21万円台の価格も魅力。Dio のベースとなっているベトナムの「VISION」は日本円で10万円台半ばで登場し現在の為替でも20万円ほどの車両だ

スペック:最高出力6.4kW(8.7PS)、全長×全幅×全高1,870×685×1,100㎜、シート高760㎜、車重96㎏、タイヤ前80/90-14M/C 40P後90/90-14M/C 46P

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