【安心のバイクライフのために】メカニックの仕事を見てみたら、プロに預ける理由が見えてきた
バイクは乗っていると徐々に性能が落ちてくる
しかしその変化には自分ではなかなか気付きにくい
高性能を維持するため、また安心して走り続けるためにも
プロの手による正しいメンテナンスが必要となる
安全・安心なバイクライフを送るため、プロに頼る
個人的な感覚ではあるが、愛車を定期点検に出したことがあるか?
という問いに対して「Yes」と答えるのは高年式のバイクに乗っている人が多いように思う。理由のひとつはメーターにメンテナンスサインが出ること。表示を見てバイクショップを訪れ定期点検してもらうのだ。ショップも定期点検を促すDMを送ったり、お得な整備メニューを用意するなどの対応をしている。定期点検の重要性を熟知しているので、多くの人に受けてもらいたいと考えているのだ。
「でも普通に走っているんだから、わざわざ点検に出さなくてもいいじゃん」という声も聞く。そんな人には”それって本当にベストな状態なの?”と聞き返したくなる。バイクは消耗パーツの塊である。走れば少しずつだが、どこかが確実に劣化していく。点検せずに長期間乗っていると、本人が気付かないうちに大幅に性能が落ちていることも。さらに乗り続けると大きなトラブルに発展しかねない。そんなとき本人は「突然壊れた」と感じるかも知れないが、たいていは予兆がある。そんな素人では気付きにくいポイントをしっかりと見極めてくれるのがプロのメカニックなのだ。
ほかにも「定期点検のコストが気になる」という意見もあった。例えばホンダドリームで実施する1年点検を例に挙げると、点検にかかる時間は1・5〜2時間ほど。費用は特殊車両を除き1万3200円から2万円の間だ。単純に作業時間に対して高価ということなのだろう。しかし内容をみると、チェックポイントは41カ所。足周りからエンジンまで車体全体に及ぶ。それを短時間でこなせるのは、多くの経験を積んだプロのメカニックだからこそ。点検を終え、その結果を聞いたときの安心感を考えると、十分に納得できる価格だといえよう。
楽しいバイクライフを長く続けるためにも、定期点検の重要性をあらためて理解してもらいたい。
Q定期点検に出す頻度はどれくらいですか?
(BikeJIN調べ、総回答者数55人)
A本格的なメンテナンスの頻度は?
1年ないし2年ごとに定期点検に出す人は6割以上。それ以外の人からは「自分でやる」「普通に走っている間は行かない。調子が悪くなったらショップに行く」という意見も。コストを気にする人もいたが、余計なトラブルを回避するためにも定期点検を勧めたい
今回は、Honda Dreamの「1年点検」にフォーカス!
【1年点検項目一覧】その数41カ所!
ステアリング装置
ライダーが一番接する部分の点検項目。1年点検ではステアリングステムの軸受部のガタをチェックする。ハンドルが左右にスムーズに動くかどうかというのは、操縦性を左右する重要なポイント。動きが悪いと、思わぬ所で怖い思いをすることも
ブレーキ装置
点検の中でも特に重要なポイント。ブレーキの効き具合はもちろん、ブレーキレバーやペダルの遊びが適正か、ブレーキホースやロッドなどに異常はないか、ブレーキフルードの漏れはないか、摺動部の摩耗や損傷、ブレーキパッドの残量まで確認する
走行装置
タイヤを中心にした足周りのチェック項目。タイヤの空気圧測定にはじまり、亀裂や損傷、異物、異常摩耗がないか、溝は残っているかなどを目視で確認。同時にアクスルシャフトを固定するナットの緩みやホイールベアリングのガタなどもチェックする
動力伝達装置
エンジンが生み出した力をリヤタイヤに伝える部品をチェック。クラッチレバーの遊び、ミッションオイルの漏れや量、ドライブチェーンの緩み、前後スプロケットの取り付け状態や摩耗具合、車種によってはドライブベルトの摩耗や損傷などを確認
電気装置
エンジンの調子を左右する「スパークプラグの状態」や「点火時期」がチェック項目になっている。1年で相当な距離を走っている場合はプラグ交換も視野に入れるそう。エンジン始動にも関わる「バッテリターミナル部の緩み、腐食」も確認事項だ
エンジン
複雑な部分だけにチェック項目は多い。エアクリーナーの状態を見てエンジンを始動。吹け上がりや排気ガスの色、匂い、有害な成分が排出されていないか確認。各部からガソリンやオイル、冷却水の漏れはないか、スロットルに連動する部分も確認
その他
エキゾーストパイプやマフラーの取り付けが緩んでいないか、損傷していないかを確認。フレームの緩み、損傷、シャシ各部の給油脂状態はバイク全体を見る必要があるので労力もかかる。ポイントを熟知したプロだからこそ短時間でチェックできるのだ
1年点検のメリット
・気が付きにくい経年劣化に対応
・旅先での故障を極力避けられる
・愛車の状態をより細かく把握できる
点検はせめて2週間前までに!
明日からツーリングなんですぐ見てくださいと飛び込みで行っても対応してくれるショップは少ない。せめて、その2週間前には点検に出して欲しい。というのも、もし点検で問題が発見された場合、交換部品の取り寄せなどに時間がかかる場合があるからだ。部品を取り寄せて交換作業して……という流れを考えると、早目に点検に出した方が間違いない。特にロングツーリング前などは余裕をもって依頼しよう。走行性能に不備がない限り、点検自体は数時間で終わる。まずはショップに整備の予約を!
Check Point
①足周り
ここからは実際にプロメカニックが行う作業内容を見ていこう。まずはセンタースタンド(ない場合は専用のメンテナンススタンド)を使って前後のタイヤを浮かせる。タイヤの空気圧や表面の状態をチェックしていく。異物が刺さっていたり摩耗が進んでいる場合は修理や交換を提案することも。ホイールがガタツキなくスムーズに回るかも確認。サスペンションの動きやサビ、オイル漏れの有無、ブレーキの効きやブレーキパッドの残量、フルード漏れがないかのチェックなどを目視や手で触れて確認していく。テキパキと作業していく姿を見ていると、素人じゃ難しいよなぁと感じた。
ほとんどの市販車はシールチェーンを採用しているが、油分が切れるとグリスを封入しているOリングが痛むため清掃と給油は不可欠。調整、清掃などは点検項目に含まれている
②エンジン周り
点検項目が一番多いのがエンジンだ。まずはエアクリーナーを確認して汚れがひどいようなら清掃か交換。必要なら同時にエンジンオイルの交換も行う。Honda Dream世田谷では3000㎞ごとの交換を勧めているそう。次にエンジンをかけ異音やオイル漏れ、冷却水漏れなどがないかをチェック。バイクの周りを歩きながら色々な角度から見て、奥のほうはライトで照らしながら目視していく。またスロットル操作に対するエンジンの吹け上がりや、ワイヤーなどの動きが渋くないかもチェックする。ツーリング先でなんらかのアクシデントが起こった場合、エンジン周りが要因の故障は現場レベルでできることは少ない。定期的かつ入念なチェックが必要になってくる。
クラッチワイヤーの遊びや動きも確認事項。遊びがないほど張っていると常に半クラッチ状態になってしまい、遊びが多すぎると完全に切れず引きずってしまう。どちらもクラッチを傷める原因だ
③ハンドル周り
コーナーなどでバイクの動きを左右する重要なポイント。左右にスムーズに切れなかったり、ステム部分にガタツキがあるとうまくカーブを曲がれない。それを確認するためフロントを浮かせ負荷をなくした状態でチェックする。また左右に切ったときにクラッチレバーやブレーキレバー、スロットルの遊びや動きなどが変化しないかも確認。もし変な場合はブレーキホースやワイヤーの取り回しに問題がある可能性も。不具合が事故に直結する場所なので念入りにチェック。
④灯火類
へッドライトやテールランプ、ウインカー、ホーンなどの灯火類は、周囲のクルマや歩行者などに自分の動きを知らせるための重要な保安部品。確実に動作するようチェックする。灯火類の動作確認は、個人でも走り出す前にやっておきたい内容。きちんと動作していないと事故の危険もあるからだ。見えにくいブレーキランプや後ろウインカーの動作を確認するときは、写真のように手をかざして行うと分かりやすい。
⑤バッテリー
最近のバッテリーは信頼性が高まってきたが、乗らない期間が長いと弱ってしまうこともある。セルの回りが弱々しいと感じたら電圧を確認。1年点検の場合は弱っていても充電すると回復することが多いという。意外と盲点なのが配線をつなぐターミナル部分。わずかに緩んでいるだけで電気の流れが不安定になり、最悪エンジンがかからないなんてことも起きかねない。目視では分かりにくいので、ドライバーなどで確実に締め付ける。
点検作業は、むしろ汚いままの方がいい!?
「最近洗車していないから持っていくのが恥ずかしい」という人もいる。それを聞くと「洗車するとオイルにじみなどがあっても拭き取られて分からなくなってしまうので、あまり気にせずに来てください」とのこと。点検後は洗車してくれるそう
取材協力
環八に面した店舗の2階にあるショールームは明るく開放的。落ち着いてニューモデルを眺めることができる。またアパレルなども充実していて、楽しい時間が過ごせる空間だ
Honda Dream 世田谷
東京都世田谷区奥沢6-3-2
TEL03-5758-3633
営業時間:10:30〜18:00
定休日:水曜、1週目と最終週を除く火曜日
https://honda-dream-japan.co.jp/shop/setagaya/
教えてくれた人
Honda Dream世田谷
チーフメカニック:海谷拓馬さん
20歳で上京し、以来8年間ホンダに勤めるメカニック。CBR600RRなどのスポーツバイクを乗り継ぐ