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【カラダ整備】ステップ⑦ 首と背中の痛みを緩和!

BikeJIN2023年6月号 Vol.245掲載

前回は、ツーリング中に発生しやすい首や手首の痛みを緩和するストレッチやマッサージをお伝えしました。ゴールデンウィークのロングツーリング中に実践してくださった読者も多いかもしれません。

首ストレッチのときにも解説しましたが、人体の基本的な仕組みとして、前後左右や表裏などの対になる筋肉がバランスによく作用することで、適正な姿勢を保っています。しかしライディングフォームというのは日常から考えると特殊なので、このバランスが崩れがち。前回まではその異常な状態を応急的にリセットする方法を解説してきましたが、今回はその逆で、片側の筋肉ばかりが使われたことで足りなくなった、反対側の筋肉を強化するトレーニングをお教えします。トレーニングと言っても、とても簡単で負荷は低めなので、ぜひ挑戦してみてください。ライディングの姿勢を長時間続けると、前傾がキツいバイクの場合はとくに、僧帽筋下部(肩甲骨内側から胸椎の下部/背中と腰の間)が張って疲労や痛みを感じることがあります。これは、対になる胸で考えると、猫背を続けたことで胸筋が縮んだ状態。これをリセットするなら、前々回お教えした壁を使ったストレッチか、もっと簡単な方法なら、胸骨から鎖骨にかけて内側から外側に向けて指先でガリガリと刺激を与えつつマッサージするだけでも大丈夫です。

しかし、伸び続けて疲労している僧帽筋下部は、力が入り続けてきた胸筋に対して力が足りていない状態なので、強化する必要があります。そのもっとも簡単な方法は、タオルを使った懸垂のようなトレーニング。やり方は下で詳しく解説しています。このトレーニングは、猫背姿勢の改善や背中痩せにも効果的。自宅や旅館にあるタオルだけで簡単にできるので、ぜひ日常のエクササイズに取り入れてみてください。

このトレーニングは、痛みに対する応急処置とは異なり、身体の状態を適正化するためのもの。ほとんどの人は、痛みなどの症状そのものを追いがちですが、実際には原因があるから痛みという症状が発生しているわけで、根本的な原因を探り、そうならないように身体の状態をよくしてあげるべきです。ストレッチや簡単なトレーニングを毎日するなど、習慣を変えることで身体の状態はよくなり、それによってこれまで悩まされてきた痛みが緩和されることは多いのです。

また、日々のエクササイズで身体を動かすことで、身体の各部をより適正に使えるようにもなるはず。ヒトの身体というのは、安定性と可動性のパートが順番につながっています。下から考えると、足首はよく動くので可動性、膝は基本的に屈伸方向のみにしか動かないので安定性、股関節は回転もできるので可動性で、じつは腰というのは可動域がかなり少ない安定性のセクションです。逆に胸椎はよく動き、肩甲骨で安定性をつくり、首はまた可動域が非常に大きな部位。このような交互の組み合わせにより、さまざまな運動ができる身体になっているのです。

この中で腰椎は、屈伸方向の可動域はあるのですが、回旋方向の可動域は極めて少なく、5度程度と言われています。だから、スポーツ用語でよく使われている「腰を回す」は、弱い場所に負荷をかける行為ですし、実際にはできない行為。腰を回しているように見えて、本来は股関節や胸椎を使っているのです。

つまり、股関節がうまく可動させられないと運動パフォーマンスは上がりません。これはどんなスポーツにも共通することで、身体を使って車体を操るライディングも同じ。そこで次回は、股関節のエクササイズについて紹介しましょう。

❶上半身を直立させ、頭の上でタオルを肩幅よりも広く握る
❷タオルが緩まないよう左右に引っ張りながら、タオルが頭の後方を通過して肩の高さくらいになるまで引き下ろす
❸タオルを引き下ろすときは、肩甲骨を寄せるように意識することが大切。胸を張り、背中が丸まらないようにも注意すること。まずは10回×3セットに挑戦して、慣れてきたら回数を増やしましょう

ヒトの身体の安定性と可動性の部位がどのようになっているか、より詳しく表したのがこの図。安定性が求められる関節と可動性が求められる関節が交互になっている

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