【カラダ整備】ステップ⑤ 簡単ストレッチで痛み緩和!
BikeJIN2023年5月号 Vol.243掲載
前回は、ツーリング中に腰痛を感じたときに、信号待ちで簡単にできる緊急対処法を紹介しましたが、今回からは休憩時や宿到着後、帰宅後にやることを前提に、腰痛などライダーが抱える身体の痛みや疲労に対応するより効果的なストレッチを教えしましょう。
これまで何度か、腰椎には大きく分けて屈曲型(骨盤が後傾)と伸展型(骨盤が後傾)の人がいることを紹介してきました。それぞれのパターンで腰痛になる原因はやや異なるのですが、ライダーの多くは男性。一般的に、男性は骨盤が後傾している割合が圧倒的に高めです。また、バイクというのは背中をやや丸めて操縦する傾向にあるので、一部には“女の子乗り” と言われる背中がピンと張った姿勢の人もいるでしょうが、女性ライダーでも骨盤を立てたまま猫背になれず、骨盤が後傾した状態で長時間乗った結果として腰痛になる人は少なくないと考えられます。
という大前提のもと、骨盤が後傾して腰痛になってしまった場合に効くストレッチを挙げるなら、根本的な後傾の原因となっている腹筋側の緊張を緩める運動が効果的です。「腰が疲れたから伸ばしたい」なんて表現することは多いですが、猫背の人を横から見た状態を想像してみてください。腰や背筋はすでに伸びていて、これ以上あまり伸びません。逆にお腹側は、縮こまった状態。伸ばすべきは腹筋側なのです!
その中でもカギとなるのが、インナーマッスルの腸腰筋。これは身体の奥で、ヘソの横あたりから股関節の前側につながっている筋肉です。腸腰筋のストレッチ方法は、さまざまなウェブサイトでも紹介されているので、興味のある人はぜひ検索してもらいたいのですが、ここではツーリングの休憩時に立ったままできる簡単な方法をひとつ紹介します。
まず、足を前後に大きく開いて立ちます。この状態で、前側の膝を曲げて、前に出しているのとは逆の腕を突き上げます(後ろ側の足はつま先立ちになる感じでOK)。そして、足を出している側に向かって上半身をひねります。この状態を20~30秒キープして、今度は逆側を。数回繰り返せば、より効果的です。
このストレッチは、もちろん腸腰筋にも効きますが、股関節を伸ばしているイメージ。仮に、女性ライダーで骨盤が前傾しているとしても、ライディングの姿勢をキープすることで股関節が詰まった状態であることには変わりないので、下肢の血流障害を緩和するという意味でも、十分に役立つと思います。
また、ライディングの姿勢を長時間続けると、前傾がキツいバイクの場合はとくに、背中が張って疲労や痛みを感じることもあると思います。そんなときは、壁を使った広背筋(背中の中央部から脇下、上腕骨にかけてある筋肉)のストレッチが効果的。まずは壁の前に肩幅程度に足を広げて立ち、肩の高さあたりに“壁ドン” のように手をつきます。このとき、手で支えていないと前のめりに転んでしまうくらい、身体が前傾するようにしてください。この状態で、手の位置は変えずにお尻を後ろに引き、胸を地面に近づけるように姿勢を変化。そして肩甲骨を寄せるように意識すると、背中の筋肉が伸びているのを感じられるはずです。これにより広背筋が伸び、同時にライディング姿勢により詰まっていた胸骨を伸展させることもできます。
広背筋がカタくなると、さまざまな悪影響につながる猫背や巻き肩、あるいは肩凝りなどの要因になります。また、腕が上がりづらくなるなど、運動パフォーマンスに影響を与えることもあります。「背中が張っているなあ……」なんて感じたときは、早めのストレッチで対処しておきましょう!
❶通常の姿勢
正しく立つのは意外と難しい
❷伸展型腰痛
原因 : 腰が反って痛い(骨盤が前傾)
対処:腹を縮めて背中を伸ばすストレッチ
❸屈曲型腰痛
原因 : 腰を曲げると痛い(骨盤が後傾)
対処:腹を伸ばして背中を縮めるストレッチ
❶ストレッチ
足を前後に大きく開いて立ち、前側の膝を曲げて、前に出しているのとは逆の腕を上げます。次に、足を出している側に向かって上半身をひねり、後ろ足側の股関節周りを伸ばします
❷ストレッチ
壁などに両手をつきます。この状態で、手の位置は変えずにお尻を後ろに引き、胸を地面に近づけます。肩甲骨を寄せるように意識すると、背中の筋肉が伸び、胸骨も伸展させられます