ハーレー和尚のバイク説法「因果応報(いんがおうほう)」
BikeJIN2021年9月号(Vol.223)掲載
本瀧寺のシュウケンです。仏教に『瞋恚(しんに)』という言葉があります。
瞋恚とは、怒り、憎しみなどの感情を意味し、人が持つ百八の煩悩の一つです。最近、ニュースなどでよく聞くあおり運転も、この瞋恚からくる行動だと言ってもいいでしょう。
残念ながら人は、煩悩をすべて捨て去ることはできません。大切なのは、この煩悩とどう付き合っていくかです。
読者の方の中に、危険運転をするようなライダーはいないでしょう。でも、ツーリング先で、スピードを出したりするなどの無謀な運転をするライダーや危険な運転をするドライバーを、一
度は見たことがあると思います。
それがアナタに直接害を与えていなくても、見た瞬間に、イラッとしたり、腹を立てている自分がいなかったでしょうか。
マナーあるライダーにとって、この怒りは正義感からくる感情だと思います。でも、これもまた瞋恚なのです。
今回、このテーマを持ちかけられた時、編集部の人はおっしゃっていました。「僕は無茶なスピードを出したりしている人を見た時『可哀想に、きっとウ○コが漏れそうなんだなぁ』って思うようにしている」と。
一見、笑い話のようですが、これはとても素晴らしいことで、一つの答えなのです。怒りという“負の感情”を、笑いという“正の感情”に変えているのですから。
例えば、スピードを出している人がアナタの知っている人で、身内の危篤に急いでいると分かっていれば、それほどの怒りを覚えるでしょうか。
交通ルールを破ることは決して許されません。危険運転、無謀運転を肯定する気も決してありません。しかし、アナタがそんな人に対して、そこまで怒るほどのことでしょうか。
読者の皆さんは、バイクのことが好きだと思います。たまの休日、久しぶりのツーリングなど、バイクに乗っている時、幸せや喜びを感じているはずです。その幸福な時間を、怒りなどの負の感情に支配されることはとても残念でならないのです。
因果応報という言葉をご存知だと思います。悪い行いには悪い報いがあり良い行いに対しては良い報いが訪れるという仏の教えです。
この因果応報は、実際の行動などだけに対するものではありません。怒りなどの負の感情には、負のエネルギーが返ってきます。それは自身の無謀・危険運転につながり、さらには事故や違反などといった形としてアナタ自身に返ってきます。
逆もしかり。楽しい、嬉しいという気持ちは、プラスのエネルギーとして返ってきます。アナタのバイクライフに、今まで以上の幸せをもたらせてくれます。どちらの感情でバイクに乗るかは、アナタの気の持ち方次第です。
合掌