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From My Playlist(Track1)

日本の音楽シーンが大きな盛り上がりを見せ、バイクは自由や反抗のシンボルとして輝いた
さまざまなアーティストが作品の中でバイクを扱い数多くの楽曲がライダーの心を揺さぶった
編集ナカジマのプレイリストから思い出の曲を紹介

「午前零時の湘南道路 ナナハン飛ばす彼が好き」

 日本の音楽産業が熱かった70年代以降、バイクもまた劇的な進化を遂げて人々のライフスタイルに入り込み、大きなバイクブームを迎えていった。だから日本のポップスには、歌詞にバイクが登場する楽曲がたくさんある。

 このページでは歌詞にバイクが出てくる楽曲と、その楽曲がリリースされた時代のバイクについて語っていこうと思う。同世代の人には懐かしく、若い世代の人には新鮮に感じていただければ幸いです。

 今回紹介するのは70年代後半に活躍したコーラスグループ、キャンディーズの「午前零時の湘南道路」。メンバーの伊藤蘭さんが昨年ソロデビューを果たし、つい先ごろ44年ぶりに日比谷野外音楽堂のステージに立ったことに敬意を表してこの曲をセレクトした。

 78年4月4日、後楽園球場での解散コンサート「ファイナルカーニバル」からわずか2週間前の3月21日に発売されたキャンディーズ最後のアルバムが「早春賦」だ。

シングルカットされたヒット曲は収録されていないので、ファン以外には馴染みの薄い曲が多いが、全曲ラン、スー、ミキによる作詞作曲ということもあり、彼女たちの心情をより近くに感じる楽曲としてファンに愛された。

「午前零時の湘南道路」はスー(田中好子)さん作詞・作曲の楽曲だ。彼のバイクの後ろに乗って深夜の湘南を走る。そして今夜は帰れないかもというドキドキする青春時代の1ページを歌っている。

歌詞から黒い革ジャンが似合う彼のバイクはナナハンで、タンクの色は黒ということが分かる。タンデムシートに乗っている彼女が少し危ないと思うくらい飛ばしている。そして彼女はナナハンで飛ばす彼が好きなのである。

 ここに出てくるナナハンとは750㏄のバイク全般を指す言葉だ。楽曲が発売された78年までに発売された750㏄のバイクは67年のホンダCB750Four。このバイクがナナハンという言葉を世に知らしめた。

71年の2ストローク3気筒エンジンのスズキGT750、カワサキSS750。72年に4ストローク2気筒のヤマハTX750。そして73年にカワサキ750RS(Z2)が発売された。

僕のイメージでは、湘南を飛ばす黒いバイクはZ750FXがぴったりだったが、黒ではないし79年発売なのでまだ走っていないのだ。

78年1月にスズキGS750EⅡ発売され、黒いタンクのモデルがラインナップされた。しかし、レコーディング前の作詞段階では残念ながら市販車は走っていないはずだ。ダークホースとして77年発売のCB750FourKは黒に金と赤のラインのモデルが存在するが……。

 見つけました! 74年のTX750Bは黒がある。そして解散ライブの「午前零時の湘南道路」のイントロで、効果音として2気筒らしきバイクの排気音が使われていたことも分かった。ということでTX750が有力です。

 当時の若者の中にはこの曲を聴いて免許を取得し、ナナハンを手に入れた人もたくさんいたことだろう。ナナハンの後ろに彼女を乗せて走りたくなるという歌のお話でした。

『午前零時の湘南道路』
作詞:田中好子、作曲:田中好子・渡辺直樹、
編曲:いしだかつのり
リリース:1978年3月21日「早春譜」
キャンディーズ10枚目のアルバムに収録

BikeJIN2021年12月号 Vol.226掲載

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