【メンテナンス入門ガイド】ネジとボルトの基本
バイクを整備するときに活躍する工具は多岐にわたる
ネジ、ボルトなどのタイプとサイズによって決まっている
適材適所を知ってしっかりした工具を手に入れれば
愛車との距離が一気に縮まるはずだ
良質な工具があれば自分でできる整備は多い
ビッグバイクは300個程度の部品を1000を超えるネジやボルト、ナット類で接合・固定して組み上げられている。
エンジンをバラバラにするような重整備はプロショップの仕事だ。しかし我々ライダーには安全のためにバイクを保守管理する責任がある。燃料、オイル類、バッテリー、タイヤなどのように補充か交換をするもの。このほかに、調整や脱着を伴う整備が必要な部分がある。ブレーキレバー&ペダル、ブレーキパッド、チェーンなどだ。
こうした作業には工具が必要になる。工具のタイプや品質によって作業の質が左右される。また適した工具を使わないとうまくできなかったり、破損につながったりすることもある。
ここではネジやボルトと適した工具の選び方を紹介する。工具は身近なものでも数1000種類あるが、バイクの日常的な整備をするのに必要最低限を考えると20〜30点で大抵のことはできてしまう。
何を揃えるかはバイク整備用のセット内容が参考になる。あとは自分のバイクに必要なリアアクセル用ソケット、トルクスなど、そしてトルクレンチを揃えれば良い。
主なネジ・ボルトの種類と適応工具
バイクに使われるのは主に3種類。パーツが必要とする締め付けトルクやスペースによってタイプ、大きさ、材質が適材適所に使用されている
それぞれに合ったタイプと大きさに合わせて工具を選ぶ。慣れてくれば最適な工具を選べるようになるが、最初は大き目の工具から合わせていく
各種ハンドルに合わせて使用するソケット。ドライバー、六角、ヘキサゴンなど、ネジ・ボルトのタイプとサイズに合わせたものが用意されている
【ハンドル】
各種レンチにネジやボルトのタイプに合わせてソケットを組み合わせて使う。回す作業の確実性と高効率を誇るレンチはメカニックの必需品だ
バイク整備に必要な工具
我々ツーリングライダーが日常的な整備で必要とする工具はさほど多くない。プラス・マイナスドライバー、8〜17㎜のレンチ、六角棒レンチ、そして自分のバイクに必要な工具が数種類あればよい。国産車や欧州車はミリ、アメリカ車はインチサイズが基本である。
車・バイクの整備に最適なスタンダードな工具セット例。専用工具を必要とする重整備以外は概ねの作業が可能になる。主な工具の使い方は知っておきたい
ドライバー
正しいサイズを選ぶ
ネジの上部のプラス、マイナスの溝に合わせたドライバーが必要になる。不適合な小さいドライバーでガタが大きいまま回すとねじ山を壊してしまう
[回す力]3 対 7[押す力]
ネジとドライバーのサイズを合わせた上で、押しつけて回す。押す力7に対して回す力3が基本。回しながらドライバーが外れるとネジ山を壊してしまう
レンチ、スパナ
メガネレンチがオススメ
開口部があるスパナはボルトを2点でとらえる。リング状のめがねレンチは6点でとらえる。頭部がボルトから外れにくく均等に荷重がかかるため、確実な作業ができるのだ
メガネレンチ・オフセットタイプ
オフセットタイプはボルトに合わせやすく、大きな力を入れやすい。柄がオフセットしているので、フラットタイプより手の入るスペースが確保できて使いやすいことが多い
モンキレンチ
ボルトやナットのサイズに合わせて口径部をダイヤルで調整することで、さまざまなサイズに対応できる調整式レンチ。下あご方向に回すのが使い方の基本
六角棒レンチ/ボールポイント六角棒レンチ
代表的なのはこのL型タイプでセットでも販売されている。短辺と長辺の先端が六角になっている。長辺先端がボールポイントタイプは、斜めからも作業ができる。ソケット、T形ハンドル、ドライバー、折りたたみタイプなどもある
レンチとソケット
ネジやボルトに合わせてソケットを組み合わせる
多種多様なネジ、ボルトに対応したソケットと、特色あるレンチを組み合わせることによって、どんなシチュエーションでも確実な作業ができる。自分のバイクに合わせて選んでいこう
抜群に使いやすい
・ ネジやボルトに合わせてソケットを組み合わせる
・ メガネやスパナのように外さずに効率的に回せる
・ コンパクトに収納可能で組み合わせ次第で携行可能
ラチェットハンドル
ハンドルのヘッド部分に各種ソケットと組み合わせて使う。ソケットの回転方向を変更して、反復させるだけで「締める」「緩める」を効率よくできる
ドライバータイプ
先端に各種ソケットを組み合わせるドライバータイプのハンドルは狭い所の作業に適している。比較的小さな8㎜のボルトやプラス・マイナスのネジ類に使用
T型レンチ
先端に各種ソケットを組み合わせるT型のハンドルは、奥まった場所での使い勝手が良い。柄をもってクルクル回せるので、作業効率の良さも特徴である
+
ソケット
6角のボルト・ナットに対応。レンチの接続部のサイズに合わせて選ぶ。バイクでは8、10、12、14、17 ㎜ を頻繁に使うので揃えておきたい
六角棒ソケット
六角穴付きボルトに使用するソケットタイプのソケット。ヘキサゴンソケットとも呼ばれている。バイクには4㎜~6㎜程度のボルトが多い
ビットソケット
プラス、マイナスのネジに適合する物や、トルクスと呼ばれる星形のネジ用など、各種ネジのタイプとサイズに合わせて細かく設定されている
ビット、ビットソケット、エクステンションバーを組み合わせればドライバーの作業もできる
バイクのパーツは小さくて、限られたスペースにパーツが配置されているので、メガネレンチでは届かないことも多い。そこで活躍するのが各種レンチとソケットだ。特にラチェットハンドルレンチと深さが取れる延長部品のエクステンションバーを組み合わせれば、確実・迅速に作業ができる。ハンドルのサイズは、差し込み角と呼ばれる先端の四角い部分の一辺の長さで、6.3㎜から88.9㎜までの8種類ある。バイク整備には差し込み角9.5㎜のハンドルが作業しやすいのでオススメだ。携行を考えるなら、6.3㎜のハンドルもコンパクトながら十分候補になる。
締め付けトルクがとても大切!
ネジ、ボルト類は金属同士の摩擦力で締結している
同じサイズでも場所によって締め付けトルクは異なる
締め付けトルク管理で愛車の動きが変わる
整備のベテランになると、ネジ、ボルトのサイズと箇所によって「大体このくらい」という感覚を持てている人もいるが、日々整備をしていない我々はその感覚は持っていない。小さいネジは締めすぎればちぎってしまいかねない。締め付けトルクが足りなくてガタが出れば摩耗が進んだり、脱落につながるかもしれない。トップブリッジのステムシャフト上部のナットは、締め付けトルクによって、ハンドリングが変わるほどの影響力がある。スパークプラグやオイルのドレーンボルトのように柔らかいワッシャーが入っている箇所は手の感覚だけで適正なトルクで占めるのは至難の業だ。あなたもトルクレンチを手に入れて整備の精度を上げてみよう。
トルクレンチも各種ソケットを挿し込んで使用。差し込み角より大きなソケットは、アダプターを用意すれば使用可能だ
MT-07 主要箇所締め付けトルク一覧
フロントアクスル | 65Nm |
リアアクスル | 105Nm |
フロントアクスルピンチボルト | 23Nm |
フロントキャリパーボルト | 40Nm |
フロントフォークピンチボルト (トップブリッジ) | 26Nm |
フロントフォークピンチボルト (アンダーブリッジ) | 23Nm |
フロントフォークキャップ | 23Nm |
スパークプラグ | 13Nm |
オイルフィルターカートリッジ | 17Nm |
オイルドレンボルト | 43Nm |
小さいけど“できる”やつ
最近は車載工具をほとんど積載していない車種も多い。自分で少し整備しようと思ったときに、ミラー付け根のナットも回せない。しかし数万円もする工具を揃えるのはちょっと難しいと思うのは当然。そこでオススメなのがTONEのソケットレンチを核としたコンパクトなセットだ。差込角6.35㎜のハンドルは小ぶりだがバイクの整備には使いやすいサイズだ。弊社通販サイトで購入可能となっている。
セットにはバイク整備で頻繁に使われる8 ~ 14㎜の六角ソケット、ドライバーとヘキサゴンなどのビット、ビットアダプター、アクセスを助けるエクステンションバー、そしてモンキレンチが含まれる。携行も可能なサイズだ