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【Vespa・GTV300】U400で行こう!

400クラス以下のバイクは身近な存在になってくれる
車格、性能のどれをとっても日本の環境に合っている
無理をせずに長く付き合えるのがUnder400の魅力だ
今回はベスパGTV300を街から山間部へと走らせた

Vespa・GTV300
価格:91万3000円
エンジン:水冷4st.単気筒278cc
最高出力:23.8ps/8250rpm
車重(装備):163kg
シート高:790mm
燃料タンク容量:8.5L
タイヤサイズ:F=120/70-12、R=130/70-12
カラー:ベージュ、グレー

スポーティさを主張した高性能ヴィンテージモデル

スクーターのトップブランドであるベスパは、スチールモノコックボディや片持ちリンクアームフロントサスペンションなど独自のシステムを構築したメーカーだ。そして、コミューターとの認識が強いスクーターながら、パリ=ダカールラリーに参戦するなどレース活動にも積極的に取り組んだ歴史がある。そんなレーシングベスパの流れを汲むモデルが今回紹介するGTV300だ。

現代のスポーツスクーターは先鋭的なスタイリングとしているのが一般的だが、GTV300はベスパならではのヴィンテージデザインを採用している。さらにフロントフェンダー上に設置されたローヘッドライトやパイプハンドルなどの装備も特徴的。これは1 950年代のレーシングベスパ・セイ・ジョルニをモチーフとしたからだ。そして2017年に限定販売された現代版セイ・ジョルニから受け継がれたデザインでもある。

シングルシーターに仕立てられたボディに乗車すると、平均的な体格の日本人には高いと感じる車高で、取り回しには少し苦労しそうだ。しかしアップライトな上体と相まって目線が高いので、視認性はいいと感じた。足置きの自由度が大きい広いフロアやワイドなシート、そしてアップハンドルによってもたらされるアップライトなポジションは、運転操作がしやすく快適な走行ができる。

スタートすると力強い加速を示す。搭載するHPE4ストローク水冷単気筒エンジンは、5250回転で最大トルクを発生する特性なので、低中速でとくに扱いやすくパワーあふれる走りを見せてくれる。最大出力も約24psとパワフルなので、高速走行はもちろん上りが続く山道もグイグイ走ってくれる。全域でトルクフルかつスムーズなパワーフィーリングを実現しているので、低速走行を強いられる市街地でもストレスなく走ることができる。

スチールモノコックボディは頑丈だ。レッグシールドもあるので安心感は大きい。前後12インチタイヤのため路面状態の影響を受けやすいが、直進安定性は良く低速でも変にフラツクことはない。片持ちリンクアーム式フロントサスペンション、ツインショック式リアサスともに作動性は良好で、一般道も高速道路でも吸収性に不足は感じない。

スクーターとしての利便性だけじゃなく、高速道路を利用したロングツーリングやワインディング走行も楽しめる。そんな付加価値がこのGTV300にはあるのだ。

心臓部にはベスパでもっともパワフルな278㏄ HPE 水冷4 ストロークSOHC4バルブ単気筒エンジンを採用。23.8HP/8250rpm の高出力を発揮するだけじゃなく、26Nm/5250rpmという低中速型のトルク特性が力強い加速を実現する

象徴的なスタイルを継承しハイテク装備を追加

元ネタはコレ

6日間の長丁場で勝敗を競うアベレージラリーで1951 年、9個もの金メダルを獲得した伝説的なレーシングベスパに冠された名前が「Sei Giorni」だ。GTV300はこのセイ・ジョルニの血統を受け継いだモデルなのだ

国内では小型二輪に分類されるモデルになるが、そのクラスで考えればコンパクトなボディだといえる。また、クラシカルな雰囲気を残すモダンなデザインは、個性を主張していると同時に流行に左右されない普遍性があるのが魅力

むき出しのパイプハンドルを装備しているので、スマートフォン用のホルダー装着が容易。オプション設定のベスパ MIAシステムを介して車両とスマートフォンを接続して多くの機能にアクセスすることが可能だ

スタイリングデザインにマッチした丸型のデジタルLCDメーター。スピード表示を中心に、燃料計、水温計、時計などが見やすく配置されている。表示はホワイトの透過光タイプなので昼夜を問わず視認性がいい

フロントフェンダー上に設置されているシンプルな丸型ヘッドライトは、レーシングベスパSei Giorniの流れを汲んでいる。それによって他とは一線を画す表情を作り出すことに成功している。ランプはLEDだ

ランプ類は現代的にLEDを採用している。ボディにビルトインされたテール/ストップランプ、ホワイトレンズ採用のウインカーランプとも明るくて被視認性に優れ、安全性の面からも安心できる装備である

積載装備ではシート下のトランクスペースがある。ヘルメット収納は難しいが必要な荷物を簡単に収納できる。フロント部には格納式コンビニフックも装備。さらにアクセサリーのリアラックとトップボックスが装備

フロントのサスペンションは、一般的なテレスコピックタイプのフォークではなく片持ちリンクアーム式サスペンションを採用。細かな衝撃をうまく吸収してくれる。ブレーキはφ220㎜シングルディスクを装備

リアサスペンションはツインショック式で、4段階のプリロード調整機構を採用している。構造上ストロークは大きくないが、通常の走行で底付きするようなことはなく衝撃吸収性はいい。ブレーキはφ220㎜ディスク

街乗りでは?

ハンドル切れ角が大きく路地の走行にも不安なし

もともとスクーターはコミューターとしての性能が高いので、GTV300も市街地走行に高い利便性を発揮してくれる。低中速トルクのあるエンジンも街乗りに適している。走行安定性も高く、前後12インチの小径タイヤながら、低速でフラツクような症状も出ない。車重は160㎏ほどなので重さは気にならないが、シート高は790㎜で幅が広いので降りて取り周す。

高速道路では?

走行風を気にせず走れエンジンパワーにも不足なし

低中速トルクがあって高回転までストレスなく回るエンジンは、加速車線で十分なスピードが出せるので、不安なく本線へ合流できる。エンジンパワーも高速巡航するのに不足はない。振動がまったくないわけではないが疲労を増幅させるようなレベルじゃない。またレッグシールドが走行風を遮ってくれ長時間走行も快適だ。

ツーリングでは?

ロングツーリングに十分に適応する走行性を実現

ハンドリングに関しては、低速でフロントが内向するフィーリングがあって当初は少し戸惑った。キャスターが立ったようなスポーツ志向の操縦性のようだ。しかしある程度スピードが出ている状態でコーナーにアプローチすると、ピタリと安定してニュートラルな特性となる。ワインディングをそれなりに楽しめる操縦性だ。全体に乗り心地もいいのでツーリングの相棒にもなってくれる。

さまざまな用途に活躍する希少な小型二輪スクーター

スクーターはその特性から市街地の移動道具、通勤通学の足といった利用が多い。その場合、軽量コンパクトな原二スクーターが最良の選択となる。300㏄クラスの小型二輪となるGTV300もコミューター的な要素があるので、日常の足として利用してももちろんかまわない。だが単にそうした目的で選ぶならオーバークオリティだ。レーシングベスパの血統を受け継いだモデルなのだからやはり、走りを楽しみたい。なので積極的にツーリングしたいユーザーに向いていると思う。あとは91万3000円という価格をどうとらえるかだ

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