1. HOME
  2. COLUMN
  3. ハーレー和尚のバイク説法「衣替え(ころもがえ)」

ハーレー和尚のバイク説法「衣替え(ころもがえ)」

本瀧寺のシュウケンです。ついこの間まで寒かったのに、急に暖かくなり、場所によっては夏日を記録しているとも聞きます。先日、当寺でZ1などカワサキ車が30台ほど集まって行われたご祈祷ミーティングでも、参加されたライダーが、ライディングウエアのことを話していたことを思い出しました。こう季節の寒暖差が激しいと、衣替えに苦労されるライダーのみなさんも多いことでしょう。

3月31日に本瀧寺で行われたカワサキ車によるご祈祷ミーティング。Z1やZ1000R(ローソン)など30台近くの往年の名車が参加。元カワサキワークスの多田喜代一氏もかけつけてくれた

当然ですが僧侶にも衣替えがあります。6月1日から9月30日までは夏衣、10月1日から5月31日までが冬衣。なぜこの日なのかは分かりませんが、昔からこの日を境に衣替えをします。冬衣から夏衣、また夏衣から冬衣へと衣が替わるだけですが、衣替えの度に気が引き締まり、一つの区切りになるような気がします。

じつは『衣替え』という言葉は、仏教から由来したという説があります。仏教では宗派などによって衣が違います。そのことから宗旨を替える、師匠を替えることを衣替えと言ったそうです。余程のことがない限り、宗旨や師匠を替えることはありません。恐らく衣替えには、相当な決意が必要だったことでしょう。

私にとっての師匠は、やはり本瀧寺の住職でもある父になります。しかし、広い意味では、周りのものすべてが師であります。例えば当寺の御瀧もその一つです。今から1300年ほど昔に行基菩薩が開かれたという御瀧は、当寺でもっとも神聖な場所です。私自身、今もここで滝行をしますが、その度、新しい悟りを得ています。もっと言うと当寺のある妙見山自体もそうです。豊かな自然を見ると、とてもおだやかな気持ちになり、なにかを教えられている気がしてきます。時に厳しいものでもありますが、師というのは弟子を正しい道に導き、決して見放すことなく見守る存在だと私は思います。

1200年以上も前に行基菩薩が開いたと伝わる本瀧寺の御瀧。本瀧寺の名前の由来ともなった滝で、希望すれば滝行も行える

ツーリング先などで綺麗な景色に出会うと、幸せな気持ちになったり、おだやかな気持ちになることはないでしょうか。また、美味しい物を食べた時も、そのような気持ちにならないでしょうか。以前にもお話ししましたが、イライラした気持ちや怒りなどの負の感情には、負のエネルギーが集まってきます。逆に幸せな気持ちなど正の感情には正のエネルギーが集まってきます。これはバイクを乗る上でとても大切なことです。仏教で言う衣替えと違って特別な決意などは必要ありません。「鰯の頭も信心から」ではありませんが、あなたの気持ち次第で、周りのものすべてがあなたのバイクライフの師になりえるのです。

合掌

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

関連記事