1. HOME
  2. COLUMN
  3. 未分類
  4. 【Thinking Time】㊹加速する電動化! Hondaは世界市場をリードできるのか

【Thinking Time】㊹加速する電動化! Hondaは世界市場をリードできるのか

2040年代に全ての二輪製品のカーボンニュートラル実現を目指すホンダが
電動二輪事業計画の上方修正を発表。電動事業開発本部を新設し体制を強化
開発生産の効率化、設備投資によってコストダウンも実現し普及を加速させる

ICEの資産が大きな強み電動二輪市場に本格参入!

11月29日、ホンダが株主向けの電動二輪事業説明会を行った。莫大な設備投資が必要となる電動化事業に対してどう収益化を図っていくのかに注目が集まった。ホンダのICE(内燃機関)搭載車両の販売は国内のみならず世界市場でも好調で、その高い収益率がホンダの経営を支えてきた。電動化でもその体質を維持できるのかどうかは株主ならずとも関心が高いところだ。

しかし、そうした心配をよそに電動二輪事業計画の拡大と目標販売台数の引き上げが発表された。「カーボンニュートラルへの道はひとつではない」と合成燃料や燃料電池、水素エンジンなどの開発研究も並行して進め、マルチパスウェイで脱炭素化を目指しているのが日本の自動車メーカーだが、こと二輪車業界の道すじで言えば国内・世界市場でシェアナンバーワンのホンダが示していくものの影響は大きい。前年に開催された二輪事業説明会でも「二輪車は電動で行く」ことを明言していたがまったくブレていなかった。

【2030年までにグローバルで約30モデルを投入!?】
2030年までにグローバルで累計約30モデルを投入する。この頃にはスーパースポーツやオフロードも含めてのフルラインナップが完成するそうだ。充電時間の短縮や航続距離の延長など大幅な性能向上につながるとされる全固体電池がいつ二輪車に採用されるのかも影響するだろう。

というよりも、電動化から目をそらすわけにはいかないのだろう。国内市場を見ているだけでは分からないが、世界市場に目をやれば中国やインド、アセアンの国々が今まさに二輪車の電動化を推進しているからだ。2003年以降、中国市場は都市部へのICE搭載二輪車の進入禁止といった強い規制により軒並み電動化に向かい、EB(自走可能な電動自転車)やEM(電動モペッド)といった電動二輪車が爆発的に普及している。

いまや二輪車生産大国となったインドではEV(電動バイク)に特化した地場のベンチャー企業なども参入し前年比約7%の増加(2022年)を見せている。また、バッテリーの原料となるニッケル・コバルトの産出国であるインドネシアは成長戦略として電動二輪関連事業を中国・韓国等と連携して推進している。ホンダはこうした市場にいよいよ本格的な進出を始めるのだ。

EB中心の中国市場は広がらず?インド・アセアンのEV市場へ展開
電動二輪車の世界市場規模(2022年)は約5500万台で、その大半が中国市場だが、中国国内で圧倒的に普及しているのはEB(自走できる電動自転車)で、中国の自転車文化をそのまま電動化したような状況。他地域に広がるかは未知数だ。EVバイクは成長戦略とされているインド・アセアンで拡大中で、ホンダも投資を拡大する。

電動二輪車でも世界で勝つ!ホンダの本気が頼もしいぞ!

ホンダには勝算がある。ICE搭載車両で培ってきた開発、生産、調達能力、全世界で3万店の販売ネットワーク、さらにはモジュール設計により車体各部・構成部品のプラットフォーム化を推進し、コストダウンを実現しながらコミューターからリッタークラスのファンモデル、ATVに至るまで効率的に電動車両のフルラインナップを展開する。また、電動車ならではの付加価値として、車体にコネクテッド技術を付加することでソフトウエア・アップデートによる性能・機能・利便性の進化も行う。ユーザーのニーズにきめ細かく素早く答えることで世界のあらゆる地域で優位性を発揮していくのだ。

【ラインナップ拡充の秘密はコレ!車体のモジュール化で効率展開!】
ラインナップを増やせる理由のひとつにバッテリー、パワーユニット、車体のモジュール化がある。ICE車両でつちかったプラットフォーム技術で様々なニーズに対応した商品を効率よく開発・生産する。
【購入後もバイクの能力が拡張!新たなビジネスモデルも想定】
 ホンダのEVはコネクテッド技術によりソフトウエアをアップデートすることで購入後も性能、機能、利便性などを向上できる。現在運用中のアプリ「ロードシンク」(写真)がさらに進化していくのだ。

また、電動車専用工場やバッテリー工場も新設し、課題とされるバッテリーについては他社との提携も進めながら内製化の割合を増やしていく。こうした動きは半導体についても同じで、世界最大級の半導体メーカーであるTSMC社(台湾積体電路製造・台湾)とも提携・開発を進めていく。ベンチャー企業や新規参入組には決して真似することのできない強みをホンダはすでに持っているのだ。

【FUN EVは先進国市場から投入!急速充電環境への適合が課題か】
2025年には650cc相当の“FUN EV”を3機種投入。国内ではプラグイン充電の急速充電環境への適合が課題だ。急速充電規格CHAdeMO(チャデモ)と普通充電J1772規格の両方が使えてほしい。

2030年代には全固体電池の搭載も見えてくる。そうすれば、交換式でも固定式でもバッテリー性能は飛躍的に高まり、ユーザーの不満は大きく減少するだろう。国内市場での懸念を言えば、カーディーラーも含めた急速充電設備に対応すること、購入補助金を用意してくれる自治体を増やしていくことが課題と思われる。今から取り組むべきだろう。

MPPは事業者メインで進行か?個人向けはプラグインでコストダウン

交換式バッテリーとして仕様統一されている「モバイルパワーパック(MPP)」は郵便配達など社会インフラ事業者から普及が進んでいて、この流れは海外市場でも同様だ。個人向けEVについては、パーツ構成が少なくコストダウンが図れる固定式バッテリーでのプラグイン充電を想定しているようだ。

電動原付一種のホンダ「EM1e:」はMPPを1本搭載し、一充電の時間は約6時間、航続距離は約53㎞(条件による)。USBソケットも装備
「SC e: Concept」はMPPを2個搭載する原付二種相当の電動スクーター。2人乗りの際のトルク、登坂特性は気になるところだ

昨年から50万台も引き上げられた目標「2030年に400万台」

ホンダは、電動二輪車戦略を目標値の引き上げという形で拡大・加速させてきた。原付一種などのコミューターから大型バイクのファンモデルまでのフルラインナップ展開、安心の走る・曲がる・止まるといった基本性能の高さにコネクティビティによるアップデートなど電動二輪ならではの付加価値、電動車専用工場の稼働とバッテリー開発・生産の内製化、モジュールプラットフォームによる効率的な車体の開発・生産とコストダウン、世界中に約3万軒のホンダバイク販売店と既存のネットワークに加え、オンラインも融合させる販売手法により50万台分を引き上げられるという判断だ。

2030年代へのホンダ電動二輪戦略目標

ユーザーとして特に期待したいのは車体コストの約50%削減というところ。電動バイクは価格が高いことがネックだが、自治体からの電動車購入補助金もバイクに対しては適用されないことが多い。固定式バッテリーでのプラグイン充電とすれば部品点数や製造工程が削減でき、車体価格自体を下げていくことができる

電動車とICEのグローバル販売構成比イメージ

このグラフはICE車両と電動車両の販売構成比を表しており、2030年にはホンダ製バイクの約15%が電動車になるという予測だ。市場の中心は日本ではないが、現在急拡大しているインド市場、国策で成長戦略となっているインドネシアなどのアセアン市場で伸長が見込まれ、こうした国々でホンダはシェアの拡大を見込んでいる

関連記事