【バイク日和】バイクがくれた新しいつながり
バイクの免許を取ったのは5年前
少し遅かったけれど「人生に悔いを残したくない」そんな想いで一歩を踏み出した
するとバイクを通して、かけがえのない人脈、そして新たな“夢”も
自分の可能性を広げてくれるバイクにハマっている
来店したお客さんと新しい話ができる幸せ
JR新橋駅の近くでダイニングバーを経営している平川文子さんがバイクに乗ろうと思ったのは、6年ほど前の出来事がキッカケ。
「突然、同じ歳の友人が病気で亡くなってしまった。そのときに〝人生、やりたいことをやっておかないと後悔するな〞と思ったんです」 そのひとつがバイクに乗ることだった。
「幼い頃に街を歩いていたとき、道端に停まっていたバイクにライダーがまたがり、キック一発でエンジンをかけて走り去っていった。それが最高にカッコよく見えて」
それがバイクに対する原体験だった。けれど周りにはバイクに乗っている人がいなかったし、両親にも反対されていた。仕事も忙しく「私にはバイクに乗ることはできない」という考えになった。
しかし前述した出来事を機に〝一度しかない人生、やりたいことをやり切らないと〞という気持ちに火が着いた。普通ならばすぐに教習所で普通二輪免許の教習を受けるだろう。ところが文子さんはバイクで使うギヤやクラッチのことを理解しようと、普通自動車のMT免許を取りに行った。「今思えば別に必要なかったんですけどね」と笑う。
そしていよいよ普通二輪免許へチャレンジ。普段から自転車で通勤していたのでスムーズにいくかと思いきや、やはりエンジン付きは違った。最初の頃、アクセルの加減が分からずカーブで植木に飛び込んでしまったのだ。その後の教習をキャンセルするほどのショックを受けたが、次の教習のときにはトラウマが残らぬよう教官がていねいに指導してくれたという。
そんな経験をしたので、免許を取ってもすぐに公道に出る気にならなかった。しかしそれでは頑張った意味がない。卒業から2年後、意を決してバイクショップに足を運んだ。過去の思い出からキックスタートのSR400が候補に挙がったが、400は少し怖い。エストレヤかなと考えていたとき、店頭にあった赤いCB250RSを発見。聞くとちょうど整備ができたばかりでネットにも掲載していない中古車だという。クラシカルなスタイルとコンパクトな車体、なにより夢にまで見たキックスタートだ。このタイミングで出会うなんて運命だと感じ、すぐに購入を決定した。
桶川で開催されているホンダのライディングスクールに通って運転のカンを取り戻し、イザ納車へ。CB250RSはとても乗りやすく、一度のエンストだけで無事に帰宅。そこから文子さんの本格的なバイクライフが始まり、千葉や奥多摩、山梨、茨城などに日帰りツーリングを重ねた。バイクに乗り始めると、身近にバイク乗りが大勢いることが判明。新橋の飲食店仲間のツーリングチーム「オーバーオールズ」に入ったり、お客さんとバイクの話で盛り上がったり。当初は男性ばかりだったバイク仲間だが、FBのバイク女子部が開催するイベントに参加することで女性ライダーとのつながりもできた。バイクによって行動範囲が広がり、新しい人脈ができたことが嬉しいと話してくれた。
その後、ネットで現在の愛車であるW800を発見する。「タンクのカラーリングやスタイルを見て一目惚れ。これも運命だと思いすぐに契約しました」
まだ遠くまで行けていないが、いつかはSSTRに参加して日本海に沈む夕日が見たいという。
そしてバイクは文子さんに「郊外でバイクを眺めながらコーヒーや食事が楽しめるライダーズカフェを開きたい」という新たな夢をもたらしてくれた。優しい笑顔で愛車を眺めている文子さんを見ていると、その夢はそう遠くないうちに現実になりそうな気がした。
撮影協力:UNITEDCafe 世田谷店
JR新橋駅 銀座口から徒歩2分という好立地。地下に降り扉を開けると明るい店内で文子さんが出迎えてくれる。本誌持参で行くと特別サービスがある!
Public house GODY’Sゴーディーズ
※ 23年12月まではGOGUN’S BAR(ゴーガンズバー)
東京都港区新橋1-11-1JOYビル B1F
※定休日、営業時間などはSNS 参照