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ハーレー和尚のバイク説法「一水四見(いっすいしけん)」

*2023年6月号から抜粋

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

 本瀧寺のシュウケンです。間もなく梅雨がやってきます。ライダーの皆さんにとっては、1年でもっとも憂鬱な時期ではないでしょうか。バイクに乗ることができない、ツーリングに出かけられないなど、多くのライダーは雨を嫌がっていることでしょう。でも、一方では恵みの雨という言葉もあるように、農作物などにとって雨は生きていく上で欠かせない大切なものです。

 仏教に『一水四見(いっすいしけん)』という言葉があります。私たち人間にとって飲み水など普通に見える水ですが、魚にとっての水は棲む世界そのものなのです。また天人には透き通ってまるで水晶のように水が見えます。一方、餓鬼にとっての水は飲もうとすると燃え上がり、血膿のように見えるのです。同じ水でも見るものの立場、そして心の持ちようでまったく違うものに見えるという意味です。

名前の由来ともなった、1200年以上前に行基(ぎょうき)菩薩が開いたとされる本瀧寺の御滝。川や湖などで遊べば気持ちのいい水も、滝行などでは厳しい一面も見せる

 有り難いことに、当寺のカフェは多くの方に利用していただいています。当然、当寺にはライダーだけでなく一般の方もお参りに来られます。その方たちもカフェを利用します。たまに一般の方がカフェを利用している時に、ライダーが団体で来られる時があります。そういった時、席に余裕があっても大人数で来たライダーは境内を参拝するなどをして、一般の方と時間をズラすようにしてくださいます。カフェとしてお願いしているわけでもないのですが、自然とライダーが一般の方に対して配慮しているようです。

4月1日に行われた本瀧寺のご祈祷ミーティング。コロナ禍以降、初の開催ということで多くのライダーが参加した

 昨年秋に行ったバイク寺主催のツーリングの時もそうでした。30台ほど集まった参加者は2、3組に別れて目的地へと出発しました。スムーズに走るために別れたのが主な理由なのですが、集団による威圧感を与えない、周囲に対しての配慮も含まれています。数十台ものバイクが一度に走る姿は、参加している人はもちろん、バイク好きなら見かけても気持ちがいいものでしょう。しかし、道路には当然、バイク以外にクルマも走っています。また歩道には歩行者もいます。そのなかにはバイク=怖いと感じられる人もいるでしょう。

 一水四見の人間、魚、天人、餓鬼はそれぞれ住む世界が違います。しかし、私たちライダーは、ライダーだけの世界に住んでいるのではありません。バイクに限らず、この世には多種多様な立場、考え方の人がいます。自分以外の人の立場を慮ることが無用なトラブルを避けるためには大切なのでないでしょうか。

合掌

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