【ツーリングガイド佐賀】文化人を虜にする温泉と歴史を支える三大産業

三日月町が取り持つ縁笹沢左保が愛した古湯温泉

笹沢左保の股旅時代小説「木枯し紋次郎」をご存じだろうか。時代は天保年間、群馬県新田郡三日月村という架空の村に生まれた主人公が渡世人として旅をする物語。72年にはテレビドラマ化され大人気となり視聴率は30%を超えた。

その後推理小説などでも売れっ子となり、地方での公演会を開いた時期に九州を訪れた時に三日月町があることを知り、ついには古湯温泉に移住してしまったのだ。気に入った山間の風景が見える高台に居を構え、約7年間にわたって執筆活動をつづけた。

その家は現在、笹沢左保記念館となって、全国のファンを迎えている。

古湯温泉は2200年の歴史を持つ名湯で笹沢左保以前には歌人・斎藤茂吉が愛したことでも有名だ。今回お邪魔した扇屋は、正にその宿である。

ぬる湯の入り方として50分湯につかり……とあるが、大げさではなく、本当にそのくらい長湯ができる。最低でも1時間は入浴するつもりでスケジュールを立てることをお勧めする。早めにチェックインして、ゆっくりと文化人が愛したぬる湯を楽しんでから、地元素材を使った絶品料理に舌鼓を打ってほしい。

ご主人の江頭宏一さんと女将の明子さんが伝統を守ってきた。料理は地元の食材を使った鯉料理や和牛料理を楽しみにしているリピーターも多い。加えて修行を終えた慶祐さんが加わり、料理の盛り付けに磨きがかかった。進歩することが伝統を守ることなのだ。

笹沢左保記念館
1960年から2014年まで活躍した作家・笹沢左保が晩年の約7年間をを過ごした旧邸宅を生かした記念館。貴重な直筆原稿や「木枯し紋次郎」「取調室」などの初版本がコレクションされている

古湯温泉扇屋
古湯温泉はかつて、画家「青木繁」歌人「斎藤茂吉」が静養したことでも有名。その時に利用したのが源泉かけ流しの温泉宿・扇屋旅館だ。ぬる湯にゆっくりつかり、心身ともに癒される

DATA

佐賀県佐賀市富士町古湯873
TEL0952-58-2121
料金目安：1万3200円〜
※料金は時期によって変動あり、おひとり様歓迎
https://www.furuyu-oogiya.com/

茶、陶器、観光の三大産業が歴史を支えている

500年ほど前に明の国から南京釜とともに炒葉製茶法が伝わり、今の嬉野式釜炒り茶の始まりとなった。淹れたお茶が香ばしくて黄金色であるのが特徴。チャオシルでお茶のおいしい淹れ方を学べる。

400年の歴史を誇る肥前吉田焼と、志田焼（84年終了）という窯元がある。昭和時代に一世を風靡した水玉模様の急須と湯飲みは、吉田焼を代表する商品だ。日々の生活の中で使ってほしい。

そしてもう一つの柱は温泉だ。嬉野温泉には神功皇后が戦の帰りに立ち寄り、白鶴が川で羽を癒したのに習い、兵士の傷を癒したという伝説がある。戦国時代以降は湯治場として歴史を重ねてきた。街中には足湯や日帰り温泉がある。クリーミーな湯豆腐は伝統的な嬉野名物。新たな名物は大村屋のミルク感が魅力の「牛乳プリン」で、定番バニラとうれしの茶を使った抹茶味は人気のフレーバーだ。

舞台造りの祐徳稲荷神社や歴史的町並みの肥前浜宿が名高い鹿島市、海中鳥居と竹崎カニの太良町。ここにまたがる多良岳オレンジ海道をぜひ走ってもらいたい。広域農道だが橋の高さが尋常ではなく、バイクに乗っていても足がすくむほど。空を飛んでいるような気分になる。太良は竹崎カニを食べられる温泉宿も充実しており、湯舟から眺める有明海はオススメ。

うれしの茶交流館（チャオシル）
うれしの茶の歴史や製法、おいしさの秘密を知ることができる施設。おいしいお茶の淹れ方教室や、嬉野温泉の温泉水を使ったユニークな茶染め体験など、お茶に関するさまざまな体験ができる

DATA

佐賀県嬉野市嬉野町大字岩屋川内乙2707-1
TEL0954-43-1991
https://www.city.ureshino.lg.jp/kanko/ureshinocha/_23805.html

肥前吉田焼
吉田には食器など生活雑器を中心に製作する窯元が連なる。各窯元では製作工程を見学することが可能で、使用に問題ないと納得される方には規格外品を販売する取り組み「えくぼとほくろ」が人気

嬉野温泉 旅館大村屋
江戸時代に大村藩の脇本陣として生まれた嬉野温泉最古の温泉旅館。現在のコンセプトは「湯上がりを音楽と本で楽しむ宿」。レコードを鑑賞できる湯けむりラウンジや湯上がり文庫をそなえる

DATA

佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙848
TEL0954-43-1234
料金：1 泊2 食付き1 万6500 円～
平日はルームチャージ＋3000円で1人での宿泊も可
https://www.oomuraya.co.jp/ryokan/

嬉野温泉公衆浴場「シーボルトの湯」
大正ロマンを感じさせるゴシック風建築物「シーボルトの湯」は、木造2階建て、約750平方メートル。嬉野温泉公園の対岸に、嬉野温泉の歴史が甦るオレンジ色のとんがり屋根が目印のレトロな建物。館内には、大浴場や貸切湯、市民ギャラリーなど、市内外のお客様に、交流の場・憩いの場として親しまれている。また、充実したバリアフリー設計や、広々とした休憩室、最新鋭のマッサージ機などくつろぎのスペースも完備しており、どなたでも楽しむことができる。

DATA

開館時間：午前6時から午後10時まで（入場制限時間：午後9時30分）
休館日：毎月第3水曜日（祝日の場合は、翌日）
泉質：ナトリウム－炭酸水素塩・塩化物泉
効能：腰痛・神経痛・リウマチ・婦人病・美肌作用など

DATA

シーボルトのあし湯
利用料：無料
営業時間：24 時間営業
嬉野町大字下宿乙８２２−１

DATA

肥前吉田焼窯元会館
佐賀県嬉野市嬉野大字吉田丁4525-1
TEL0954-43-9411
営業時間：8:30～16:30（体験受付は9:00～15:00）
定休日：年末年始
https://yoshidayaki.jp/kamamotocenter/

大魚神社の海中鳥居
鹿島から太良の海岸線には肥前鹿島、大浦といった有明海らしい干潟が広がる。太良に入ると赤い鳥居が海中にある大魚神社があり、写真撮影スポットとして人気だ。海岸線には竹崎カニやカキの店が立ち並ぶ。岬の先端にはお風呂自慢の温泉宿が待っている

肥前浜宿・酒蔵通り
江戸時代から昭和時代にかけて酒や醤油などの醸造業を中心に発展した地域で古い町並みが残る。現在は、富久千代酒造、光武酒造場が伝統を守りながら製造を続けている

DATA

佐賀県鹿島市浜町
https://saga-kashimakankou.com/spot/1114

竹崎城址展望台公園
竹崎城は南北朝時代に島原の有馬隆泰によって築城、戦国時代に龍造寺家晴により修築され島原の乱の後取り壊された。展望所からは阿蘇、多良岳山系、雲仙岳の360度のパノラマを楽しめる

DATA

佐賀県藤津郡太良町大字大浦甲20
https://tara-kankou.jp/spot/post-6.html

HAMA BAR 肥前浜駅
全国初の駅ホーム直結のカフェメニューも豊富な日本酒バー。夜は電車で出掛けたい。窓越しに列車を眺めながらゆったり過ごす時間は鉄道好きには至福の時。浜宿と地元のお酒に精通したスタッフから情報をもらおう

DATA

佐賀県鹿島市肥前浜駅構内
TEL0954-60-4160
営業時間：［昼の部］11:30 ～ 16:30
［夜の部］金・土・日18:00 ～ 21:00
定休日：不定
https://hamashuku.com/hamabar/

海道しるべ
爽快なワインディングロード、多良岳オレンジ海道にある産業活性拠点施設。展望所から有明海を一望できる。地元企業と共同で開発したお菓子やアイスクリームなど、鹿島市の特産品を販売

家督屋門前店
四季折々の海の幸、山の幸など旬の味覚が楽しめる祐徳稲荷参道の食事処。祐徳名物の鯉料理(鯉のあらい・鯉こく)や定番のチャンポン、キツネうどん、カツ丼、いなり寿司もおススメ

DATA

佐賀県鹿島市古枝下古枝1651‐1
営業時間：10:00～18:00
定休日：不定
TEL0954-62-3675

祐徳稲荷神社
日本三大稲荷の一つで商売繁盛、家運繁栄、交通安全、縁結びなどのご利益があると信仰されてる。豪華で美しい社殿、四季折々の花、奥の院からの絶景、風情のある門前商店街などが魅力的

DATA

佐賀県鹿島市古枝乙1855

お食事処 海望
太良町の有明海を一望できる街道沿いの「お食事処 海望」。有明海・白浜海水浴場を見下ろしながら、竹崎カニなど有明海の海産物をふんだんに使った料理を味わうことができる