[アニメ聖地巡礼]あの夏で待ってる
(BikeJIN2022年8月号より抜粋)
二次元マニアを指す呼称として80年代に誕生した「ヲタク」という言葉
インドア派と思われがちだが、好きな作品をきっかけとした彼らの行動力はスゴい
そんなヲタクの一人である私がハマっているのがアニメツーリズム
今回の舞台は、長野県東部にある城下町、小諸市だ
2017年。長野県小諸市を起点に浅間山麓を自転車で1周するロングライド系イベント「グランフォンドKOMORO」に参加したときのこと。地方で開催される自転車イベントの多くは、その地域が潤うように前日受付とし、参加者に観光および前泊をしてもらうのがお決まりとなっている。調べてみると、JR小諸駅のすぐ隣にある小諸城は、城が城下町よりも低い位置にある日本唯一の穴城だという。これは見てみたいと思い、駅近くのビジネスホテルを予約。足を運んでみたところ、立派な石垣や門よりも先に目に飛び込んできたのが、アニメキャラが描かれたパネルや提灯の数々だった。
小諸市がアニメ「あの夏で待ってる」の舞台になっていたことを、このとき初めて知ったのだ。テレビ放映は2012年1〜3月で、今からちょうど10年前のこと。監督は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の長井龍雪さんで、キャラクターデザインは同じく「あの花」に参画していた田中将賀さん。それゆえに「なつまち」のパネルを見たときに若干の既視感があったのだ。
帰宅後、すぐにアニメ全12話を視聴した。この作品のストーリーは、高校生たちの自主映画制作を主軸とした王道的ラブコメで、小諸城址・懐古園をはじめJR小諸駅周辺、佐久平駅、軽井沢駅などが鮮明な描写で登場する。今回は先に舞台を巡り、そのあとに作品を観るという逆の順番になってしまったが、これはこれで「あっ、ここ行ったわ」という新鮮な驚きや発見があった。
冒頭で紹介したイベント、コロナ禍が落ち着いたことで3年ぶりに開催され、それに参加した。2017年と同様、前日に小諸駅やその周辺を散策したのだが、放映から10年経ったにもかかわらず、今もまだあちこちにキャラクターのパネルやポスターが残っているのだ。小諸市は放映当時に「なつまちおもてなしプロジェクト」なる取り組みを立ち上げており、驚くことにこのSNSが現在も稼働中なのである。付け加えると、今年8月6日にはドカンショという市民まつりが3年ぶりに開催されるのだが、このポスターには浴衣や法被を着たなつまちのメンバーがしっかり描かれている。そう、小諸市にとってまだなつまちは終わっていないのだ。
なぜここまでアニメキャラが受け入れられているのか? 実は先の市民まつりのテーマ曲「こもろドカンショ」を、アニソン界の帝王である水木一郎さんが歌っているのだ。昭和50年(1975年)から市民は水木さんの歌声に合わせて踊っているのだから、DNAレベルでアニソンが染み付いていることになろう。
軽井沢町のすぐ隣であり、おいしい蕎麦屋さんや歴史的な温泉宿もたくさんある小諸市。観光スポットとしてもオススメできるのでぜひ。