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【Thinking Time】㊵バイク事故に遭わないために! 埼玉県の高校講習に学ぶ

コロナ禍を終えたからだろうか。今年は交通人身事故が増えている
特に死亡事故に関しては「40〜50代・二輪車」で急増中だ
交通事故に遭わないために何が必要なのか? 5年目を迎えた埼玉県の高校生講習から学ぼう

上半期死亡事故が10年ぶりに増加。埼玉県でもバイク事故が急増中!

昨年まで減少傾向が続いていた交通事故だが、コロナ禍が終わった2023年の上半期(1〜6月)、全国各地で死者数が前年同期を上回っている。警察庁の発表によると、状態別死者数では二輪車乗車中が212人で全体の17.9%を占めていた。東京都内でも二輪車乗車中の死亡重傷事故が続いており、死者数は19人で都内交通事故死者数52人の
36.5%となり、午後4〜8時という退勤時間帯での事故が増えている。二輪車事故は夏から秋にかけて増える傾向があるので、今年の事故発生件数、死者数は前年越えとなる見込みだ。

 二輪車事故を防止するためにはなにをすべきなのか? 二輪業界では日本自動車工業会・二輪車委員会や日本二輪車普及安全協会、メーカーや販売会社、有志の団体などが安全運転の啓発や講習会の開催などに取り組んでいるが、根本的な課題も残されている。

 例えば、先に挙げたような通勤時間帯の事故を減らすための効果的な手段が導き出せていない。講習会の開催や安全運転イベントの告知も、ツーリングを楽しむようなファンユーザーには届きやすいが、通勤にバイクを利用するようなコミューター層(125㏄以下スクーター・40〜50代)には効果的なリーチ手段がないのが現状だ。

埼玉県高校生講習に見る動画&座学の可能性

リーチ手段の確立は一朝一夕には行かないが、バイク事故で多くを占める「出会い頭(34%)・右直(22%)・単独(12%)」を減らすための分析と試みは、自工会制作の動画「梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!」が秀逸で、自工会のユーチューブチャンネルにもアップされているのでぜひ見てほしい。

 この動画は、埼玉県で開催されている「高校生の自動二輪車等の交通安全講習」における「静的実技」の教材にも使われている。静的実技とは、講習会当日になんらかの理由でバイクに乗ってこれなかった生徒が運転実技の代わりに受講する座学で、8月7日に開催された秩父地域の講習会では、3名が受講した。

 動画では、四輪ドライバー視点での目の錯覚(小さなバイクは、遅く、遠くに見える)といった分析もされており、「なぜ事故が起こるのか?」を出会い頭・右直・単独・左折巻き込みといった事故類型別に分かりやすく説明している。この内容をベテランライダーでバイクレッスンのプロでもある二輪車安全運転指導員の講師が自らの経験も踏まえながらリアルな視点で説明してくれるのだ。

 実際にバイクに乗り、コース場で練習・体感することも大事だが、こうした座学でのやり取りも事故防止のためにはとても効果があると思われる。二輪車死亡重傷事故の分析データから導き出された事故防止のポイントは明確で、講師の説明と併せ、スーッと頭に入ってくる。さらには、右直や出会い頭などの重大事故につながるすり抜けがどれだけ危険な運転なのかといったことを経験豊富な指導員から直接聞くことで「そうだよな」と素直に理解できる。

教習所のコース内に再現された、右直事故やすり抜けの危険性を体感できる交差点。右折待ちの対向車のほか、トラックの影になっている歩行者にも注意する。出会い頭事故を体感できる交差点も用意されている

 さて、二輪車事故を防止するための手段として、座学というものはもっと活用されるべきだろうし、座学自体はネットやアプリといったコンテンツとの相性も良い。Eラーニングなんて言うとお固く聞こえるが、自工会が制作した動画の分析内容をターゲットユーザーに合わせて作っていく、ネット・スマホ環境に最適化させていくだけでも効果はあるのではないだろうか。もちろん、コンテンツとしては誰が言うのかも重要になるだろう。

 バイクを単なる移動手段として利用している人を試験場や教習所といった講習会場に向かわせるのは至難の業だ。タッチポイントであるバイク販売店やガソリンスタンドなどのリアルな場とネット空間、その両方からのアプローチを模索すべきだろう。

講習会でのカリキュラムは主に3つ。すべてが事故防止に役立つ内容だ

講習会のカリキュラムは大きく3つに分けられている。生徒自身のバイクで練習する運転実技(90分)、教室の中で行われる座学(45分)、座学と実技が合わさった救急救命法(45分)だ。これらのカリキュラムを2〜3グループが順々に受講していく。9時20分から始まり12時50分には各講習が終わり、13時過ぎには閉講式が行われる

【運転実技】

教習所内のコースで行われる運転実技。ブレーキング、コーナリング、Uターン、パイロンスラローム、低速バランス、坂道発進、右直・出会い頭事故を想定した交差点の通過などを練習・体験する

【講義(座学)】

座学は主に2つ用意されている。埼玉県警が行う二輪車安全運転講習(全員が受講する)と当日なんらかの理由でバイクに乗ってこれなかった生徒が運転実技に代わって受講する静的実技だ

【救命救急法】

交通社会人としての義務である事故現場での対応や人命救助について学ぶ。座学と実技で構成され、人形を使っての心臓マッサージやAED(自動体外式除細動器)の使い方などを体験する

今年度の埼玉県高校生講習で改善された点

①講習会の実施回数を7回から8回に増加
(県内6地域で計8回 ※うち秩父は3回)

②講習会場への移動中の事故を防ぐため、原則、午前中開催とする

③遠方からの参加の場合などは、車両なしでも座学のみで参加可とする

④座学の内容を充足し免許取得予定等の生徒も積極的に参加させる

⑤講義で改正道交法(特定原付)について扱う

座学では新しい車両区分「特定原付」についても説明

埼玉県警による座学「二輪車安全運転講習」では、新しい車両区分「特定原付(特定小型電動機付自転車)」についての説明があった。あくまでも参考としてのものだが、同じように見える電動キックボードでも特定原付と一般原付等では車両区分が違い、走れる場所も違うといった注意を促した
特定原付に乗る際の注意点も伝えた。中でも、自賠責保険への加入が必要なこと、車道通行の原則、免許不要でも交通反則通告制度・放置違反金制度の対象となることがポイントとされた

公道を走る上での危険を教えてくれる「静的実技」と「講義」

車両に乗ってきていない生徒に安全運転指導員が伝授「静的実技」

【ベテランライダー(指導員)の知識や経験から学ぶ】 バイクのテクニックやアドバイス今回の講習会では「骨折している」「いまバイクを持っていない」「遠方から参加」の3人が運転実技の時間に静的実技を受講した。二輪車死亡重傷事故の分析を基に自工会が制作した動画「梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!」が教材だ
二輪車安全運転指導員というベテランライダーかつバイクレッスンのプロから学ぶ講義はリアルで実践的だ。生徒らの「なぜ?」に的確に答える

運転者の責任や危険予測など県警本部が講義「二輪車安全運転講習」

【県内交通事故の現状や事故を起こした際の3つの責任について学ぶ】 埼玉県警察本部交通総務課による座学「二輪車安全運転講習」では、県内二輪車事故の詳しい現況や交通事故を起こした際の3つの責任(刑事的・民事的・行政的)、さらにはインタラクティブな危険予測トレーニング(KYT)等も行っている

四輪車の死角や内輪差など他車両との注意点も学ぶ。危険予測トレーニングでは生徒がリモコンで危険を予測しゲーム感覚で楽しく参加できる

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