【Thinking Time】㉘東京都の駐車対策が刷新!バイク駐車環境も改善か!?
*BikeJIN vol.236(2022年10月号)より抜粋
2040年代の人中心の街づくりに向けて、東京都が「総合的な駐車対策の在り方」
を策定した。人口減少、少子高齢化、ゼロエミッション
DXの推進等を踏まえた将来像を設定し、電動キックボードも含めた
道路空間の再配分にも取り組む。バイク駐車環境の改善にも期待できそうだ
今後数十年のバイク駐車環境に影響を与えるだろう“在り方”
「総合的な駐車対策の在り方」についてライダーやバイク利用者はどう見るべきか。「どこに停めるのか」という根本的な問題ひとつを取っても、路上駐車施設の対象について車道や歩道、カーブサイド(路肩側の車道空間)の活用が示された。路外だけでなく路上の活用はバイクの駐車環境改善に大きな影響を与えそうだ。
3月、東京都は、2040年代に向けてあらゆるモビリティを対象に、駐車対策の方向性や区市町村の地区特性を踏まえた施策の進め方について事例と共に提示した「総合的な駐車対策の在り方(以降、在り方)」を策定した。東京都には「未来の東京」戦略という総合的な計画があり、2040年代の東京はこうなるというものがあって、その駐車場の部分を詳しく書いたものが在り方となる。
需要の高いモビリティに柔軟な駐車スペースを
在り方では、クルマやバイクだけでなく電動キックボードなどの新しいモビリティについても対象とされており、区市町村の駐車対策の検討にあたり、その地区での需要の高いモビリティに関わる駐車スペースを確保すべきとしている。クルマの保有台数が減るなか、都心には四輪駐車場に有閑スペースが生じ、稼働率が低くなっているところもある。こうしたスペースをバイクや電動キックボード等に転用するということも、これまで以上に重要視されている。
また、バイクユーザーにとって重要な方針転換は、駐車スペースの設置場所にかなり柔軟性が示されたことだ。これまでは「駐車場は基本的に路外」という方針だったが、在り方では、路上のさまざまなスペースや沿道の敷地活用など、需要の高いモビリティに適した駐車スペースの確保に向けた取り組みを示している。都心でもほとんど見られなかったカーブサイド(路肩側の車道空間)の活用や歩道上(歩道も路上)のスペースも路上の対象施設とされたのだ。
バイク駐車場に関して言えば、在り方をまとめる際の検討委員会でもオブザーバーも務めた渋谷区が行ってきた車道を切り下げてのコインパーキング設置や新宿区が緊急避難的に行ってきた歩道に白線を引いての定期利用駐車(原付一種)といった取り組みが、都内の他の自治体でも採用される可能性が高まったのだ。
ただし、道路の管理は、都道なら都、区道なら区となっており、その道路に付随する歩道などの路上空間もそれぞれの自治体の公有地だ。周辺の道路全域に同じような駐車スペースを設置するということはこれまで難しかったが、こうした縦割り的な問題に対して、在り方では、地区ごとにマネジメント組織を作って当たることで、商店会といった地元組織、バス・鉄道会社などの交通事業者、不動産開発事業者、道路管理者(自治体)、行政(国・都・区市町村)、交通管理者(地域の警察)、さらにはシェアリングなど新たなモビリティサービス事業者も含めて横のつながりとし、地区ごとの複雑な駐車課題に対応する構えだ。
地区マネジメント組織はPDCAサイクルでの取り組みを進めていくが、東京都はそうした組織や自治体が集まる「駐車・まちづくり連絡会(仮称)」を事務局として運営する中で、意見交換や情報共有、地区マネジメント組織の成熟段階に応じた技術支援などを行う。また、区市町村では難しい国土交通省やその他の関係機関との調整役も担っていく。歩道にバイク駐車スペースを設置するといった規制緩和もこうした地区マネジメント組織に情報が行きわたり、ひとつの手法として定着していけば、駐車環境の急速な改善も見込めるかもしれない。
在り方は、区市町村に「いつまでにこれをやってください」と定めたものではないし、細かなロードマップが敷かれているわけでもない。あくまでも「未来の東京」戦略に示されたモビリティ革命期の街づくり、その中での駐車対策と方針が示されたものだ。車両メーカーや販売会社、シェアリング事業者、そうした企業による業界団体などがこの在り方をチャンスと捉え、バイクユーザーの駐車ニーズの可視化、地区マネジメント組織との協働等について積極的に動くべきだろう。
4つの区域ごとに駐車課題も取り組みも異なる
東京都も広い。渋谷のような繁華街から奥多摩のような中山間地まで、街の姿もさまざまだ。地区内の主な施設や移動手段、駐車状況等の特徴を踏まえ「都市づくりのグランドデザイン」や「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」における区分を参考に4つの地区へ類型化を行なった。同じ区域内なら駐車対策の取組みも参考にしやすいだろう
都と区市町村、各地区マネジメント組織が集まる連絡会が取り組み推進のカギ
駐車対策は各地区のマネジメント組織が個々に行う。在り方は、マネジメント組織に「いつまでにこれをやる」と課すものではないが、年に1〜2回、東京都が事務局となって連絡会を開催し、その場で意見交換、情報共有などを行って必要とあらば東京都が国土交通省などとの調整も行う。連絡会は取り組みのカギだ
Writer 田中淳磨(輪)さん
二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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