1. HOME
  2. ツーリング
  3. 【ツーリングガイド】厳しくも美しい日本海、そしてのどかな里山を走る

【ツーリングガイド】厳しくも美しい日本海、そしてのどかな里山を走る

加賀百万石の城下町、歴史ある温泉、豊富な海の幸と山の幸などなど
石川県を旅するなら金沢を中心としてのプランニングが常套手段だ
ライダーは砂浜を疾走できる「千里浜なぎさドライブウェイ」をプラスする
しかし、ツーリング先としてオススメなのは、迷わず能登半島と言いたい!

ツーリングなら奥能登バイク大歓迎のまちだ

鉄道は半島の中ほどで途絶えているため交通手段が限られており、公共交通機関で移動するのは難儀である。そのおかげで理不尽な開発にさらされることなく、自然が手つかずのまま残っている。

地元で暮らす人々は北国の地方都市ならではの苦労があるのは否定できない。しかし、我々ライダーの旅先としてはこの上なく魅力的なエリアなのだ。とくに奥能登と呼ばれる半島の先に位置する輪島市、珠洲市は美しい海と里山を走ることができる。

統計的には1年の半分は雨か雪が降るといわれる石川だ。日本海の厳しい風土は、昭和時代の歌謡曲に数多く歌われたこともあり、失恋した女性が一人旅しているイメージを持っている人も多いことだろう。森昌子の「哀しみ本線日本海」は典型的だ。石川さゆり「能登半島」、坂本冬美「能登はいらんかいね」などは題名に能登が入った大ヒット曲である。古くから「能登はやさしや土までも」という言葉がある。厳しい自然環境の中で生きてきた能登の人は、思いやりにあふれていてあたたかい。辛い気持ちの旅人が北国能登を目指したのは、人々の優しさに癒やされたいという側面を感じていたのかもしれない。

少し不便だけど、美しい風景と空いていて走りやすい道、優しい人々が待つ能登半島に旅立つことにしよう。

相棒はスズキGSX-S1000GT。発売間もない話題のロングツーリング向けのモデルだ。高速道路を走って日本海側に向かう今回の旅には頼もしい限りだ。

東京から関越道で新潟に向かう。海沿いに出て親不知をかすめて富山に入る。能登半島はもう目前だ。千里浜を走って輪島に入っていく。

鳴き砂で有名な琴ヶ浜を過ぎるとトトロ岩が見えてきた。確かに似ているがその大きさに驚いた。向かい側のパーキングで一休み。

間垣の里クリフラインの海岸線はダイナミックな景観も楽しめる

権現岩(トトロ岩)

国道249号を輪島に向かって走り、琴ヶ浜の先にトトロ岩が見えてくる。権現岩が正式な名称。旅の初日は地元ライダーの輪島市役所の池腰さん(BMW R1200R) と、モトグリードの華岡さん(ヤマハTW200)に道案内をお願いした。

DATA

石川県輪島市門前町大泊

道の駅赤神

バイ喰うカレー 950円

バイク歓迎の立ち寄りスポット。屋根付きのバイク駐輪場が店の前の一等席にある。レストランでは名物の「バイ喰うカレー」が人気。車輪を模したメンチカツをトッピング。売店には手作りみそをはじめ地元特産品多数が並ぶ。

DATA

石川県輪島市門前町赤神壱110
TEL0768-45-1001
営業時間:9:00 ~ 18:00
定休日:火曜
https://www.hot-ishikawa.jp/spot/1950

歴史に触れる散策、生き続ける門前町の魅力

輪島市門前町は曹洞宗大本山總持寺の門前に発達した町なので、そのまま「門前」。總持寺(そうじじ)と共に発展してきた。江戸時代にはその總持寺の物流を担う北前船が活況を呈し、近隣の黒島地区が船主集落として栄え、その当時の集落の姿を残す。黒島地区は輪島らしい黒い瓦の家屋が密集した、歴史をたどる散歩ができるエリアだ。とくに歴史の知識など持たなくても、その趣のある集落を散策するだけで心が落ち着く。

門前町は2006年2月1日に隣接する輪島市と合併した。奥能登という意味では合併する前から似た風土だが、今でも「門前」は独自の雰囲気を持っている。ただ通り過ぎずに、少し山の方に入って行こう。總持寺祖院に向かうと途端に里山の雰囲気になり、先ほどまで海が広がっていたとは思えない。今回は散策にとどめたが、總持寺祖院での坐禅体験や、精進料理をいただく宿泊プランなどもコロナの心配がなくなれば楽しみなコンテンツだ。總持寺祖院は多くの人に仏教を知ってもらえるように、一般の方でも体験は可能だ。

輪島市の海岸線は信号が少なく、見通しが良い道が続くエリアが多い。砂浜、岩礁など表情を変えながらライダーを楽しませてくれる。

今回の旅の相棒として選んだスズキGSX-S1000GTは、発売間もないツーリングに特化したバイクだ。スズキは80年代のG S1000Rから世界耐久選手権で活躍し幾多の栄冠を手にしてきた。レースというと馬力競争のようなイメージが強いが、耐久レースは12時間、24時間を走り続ける過酷なものだ。ライダーが走り続けられる快適性なしには勝つことはできない。

スズキのスポーツバイクづくりの肝となる、軽量でハイパワー、そしてコンフォートというコンセプトは、そのまま優秀なロングツーリングバイクが求める要件に合致している。

高速道路で一気に東京〜石川を走り、のどかな海岸線や里山、少々入り込んだ集落や滝への細道を行くのもまったく苦にならない。GTはカタログスペック的にはスーパースポーツに匹敵するハイパフォーマンスモデルだが、その懐は深く、ライダーに優しい理想的な旅バイクに仕上がっている。

操っているときの快適性は何日か乗った後の、疲労感の少なさでも感じられる。5日ほどの長丁場であったが、帰京した翌日も心身ともに妙な疲労感がなかったことも報告しておきたい。

さて、海沿いの国道249号を北上し、一度總持寺祖院を目指して内陸に入った。市道まがき線でおさよトンネルを抜ければ、外浦海岸の先に出てこられるし、輪島浦上線で西保海岸に出ても良い。そこからはまた海岸線を走り、千畳敷、ゾウゾウ鼻見晴らし台を経て、いよいよ風情ある輪島市街地へと入っていく。

大本山總持寺祖院

正式には諸嶽山總持寺祖院といい、今から約7百年前に 瑩山紹瑾禅師によって開創。後醍醐天皇に「曹洞賜紫出世第一の道場」と定められた。明治31年の災禍により七堂伽藍の大部分を焼失し神奈川県横浜市鶴見に移転。今も曹洞宗大本山の面影をしのばせる一大聖地である。

DATA

石川県輪島市門前町門前1の18甲
拝観料:500円 
拝観時間:8:00 ~ 17:00
定休日:なし 
https://noto-soin.jp/visit/

天領黒島地区

旧角海家住宅

日本の物流において海運業が主翼をになった江戸後期から明治中期にかけて、北前船の船主および船員の居住地として大いに栄えた。輪島の門前地区の海岸沿いに、今もその集落が残っており、2009年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。「旧角海家住宅」「天領北前船資料館」は必見。

DATA

石川県輪島市門前町黒島町

茶房福助

目の前にある和風カフェ。ランチは人気のメニューの蕎麦のほかにライダー限定のワンコインランチを用意。コーヒーや抹茶、ぜんざいなどに加えて、また、輪島漆器などの伝統工芸品やお土産も販売している。

DATA

石川県輪島市門前町清水2-3 
TEL0768-42-1560
営業時間:10:00 ~ 16:00 
定休日:日曜

阿岸本誓寺(あぎしほんせいじ)

能登最大級で最古といわれる浄土真宗の寺院。寛政4(1792)年に再建立された本堂は、珍しい茅葺屋根を持つ(県指定文化財)で2020年10月に修復工事が完了した。また、県指定天然記念物の「アギシコギクザクラ」があることでも有名だ。

DATA

石川県輪島市門前町南力26乙
拝観時間:8:00〜18:00
定休日:なし

アテの元祖

輪島塗に使われる木材が「アテの木」である。軽くて加工しやすい特性を持つ。杉に似ているが葉が肉厚で丸みがある。アテの木はこの木から増えたとされており「元祖」と呼ばれる神木。一般家屋の裏手に生えていて、静かに祀られている。

DATA

石川県輪島市門前町浦上
https://wajimanavi.jp/tourism/portfolio/ate/

パワースポット「3つの滝」

桜滝
石川県輪島市門前町深見
桶滝
石川県輪島市大沢町
垂水の滝
石川県輪島市町野町曽々木

流れ落ちる滝はそれぞれ個性的で、観光名所として親しまれている。水しぶきでマイナスイオンを感じさせるが、それ以上に厳かな雰囲気はパワースポットとしても崇められている。垂水の滝は街道沿いだか、ほかの2つは少し里山に入り込んだ静かなところにある。

関連記事