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【Thinking Time】⑩バイクの高速道路料金が 普通車の半額になる!?

*BikeJIN vol.220(2021年6月号)より抜粋

3月24日に開催された二輪車問題対策プロジェクトチームの会合で
かねてより検討を続けていた国交省が、バイクの高速料金を普通車の半額とする
期間限定割引プランを提示した。ツーリングプランのバリエーションとしての想定だが
条件の一部に対してはユーザーや業界から改善を求める声も上がっている

高速道路料金の不公平問題 二輪車料金適正化に向けて前進!


高速道路料金の適正化に向けて大きな動きがあった。3月24日、自民党の二輪車問題対策プロジェクトチーム(通称PT)の会合で、国交省から「定率のツーリングプランを設定する」という案が出されたのだ。ただし、開始時期は来年の春からとされ、対象条件も「ETC搭載・登録済み車両で100㎞以上走行の場合のみ」となっている。事前登録など申込み方法はこれまでのツーリングプラン同様となる見込みだ。
2017年の首都圏ツーリングプランの導入、翌年の全国4地域13コースへの拡大実施と、定額乗り放題割引ツーリングプランにより、利用実態を把握してきた国交省が、いよいよ「普通車の半額」という定率ツーリングプランの実施を表明。週末・100 ㎞以上など制限は多いが、料金適正化に向けて前進だ。

ツーリングプランの利用にはETC車載器の装着・登録が必要だ。ETC 車載器の購入助成もAJの要望活動によるものだ
ETC購入助成制度
首都圏→こちら
中京圏→こちら

昨年6月に創設された妨害運転罪。加害者にも被害者にもならないためにはドライブレコーダーの装着が効果的だ

業界団体と政治家が表に立ち 不公平な料金問題を正す

定率ツーリングプランの料金は、普通車の半額になるとされる。これまで、全国オートバイ協同組合連合会(通称AJ)ほか二輪業界団体が要望し、PTの逢沢一郎座長が繰り返し発言してきた「普通車の半額程度の料金が妥当」という認識に応じた金額になりそうだ。料金の設定については、これまでにもPT等の場で国交省を交えてやり取りされており、「ネクスコ(民間企業)の収入減につながるのでは?」という論点もあって、調整に時間を要していた。
 

なお、「料金が高すぎる。不公平である」という問題の根本は「軽自動車とバイクが同じ車両区分にある」ことによる。「道路上の占有率や路面への損耗度合いを考えれば、軽自動車と同じはずがない」という声は、二輪業界、バイクユーザーともに発してきたものだ。軽自動車とバイクの車両区分を分けるということは、現時点では明言されていないが、これこそが二輪業界とバイクユーザーの悲願であり、ゆずれない条件だろう。 

ところで、オートバイ議員連盟(党によって名称が異なる)所属の有無に関わらず、与野党の政治家がこの問題に動くのは、高速道路問題が地方の地域活性化や沿線部の渋滞・騒音問題など、広く国民に関わるものだからだ。高速道路は、建設自体にも補助金という名目で税金が使われているし、通行料金にも消費税が乗せられている。深夜・休日割引といったETCの割引制度にも定価との差額に対しては税金が使われているのだ。税金の基本的な原則である「公平・中立・簡素」に照らしてみれば、軽自動車とバイクが同じ料金ということはどう考えてもおかしく、不公平がまかり通っている状況だ

二輪車問題対策プロジェクトチームが “一丁目一番地”として議論してきた

高速道路問題の改善は、最高速度の100㎞/h引き上げ(2000年10月)、2人乗り解禁(2005年4月)など、全国オートバイ協同組合連合会(通称AJ)が中心となり政治家や中央官庁に対して陳情や要望を続けてきた成果だ。各政党にオートバイ議員連盟が作られ、関係省庁も出席する政治家の勉強会で担当官僚に直接要望するという場づくりはとても強力で効果的だ。自民党オートバイ議員連盟の逢沢一郎座長が「高速料金問題の適正化は一丁目一番地である」と繰り返し発言してきたのも、こうしたロビー活動の賜物だ。

PTで座長を務める逢沢一郎衆議院議員(右)と今村雅弘衆議院議員(左)。二人とも自民党オートバイ議員連盟に所属。

100㎞超では満たせぬ? 日帰りツーリングでの需要

さて定率ツーリングプランは、現状では条件に納得のいかない部分も多い。特に、「100㎞以上を走らなければならない」という条件は、日帰りツーリングがメインのライダーからすると遠すぎる距離だ。例えば、都内在住者が日帰りツーリングの定番エリアである箱根まで行ったとしても、この条件では定率ツーリングプランを使うことができない。

2022年実施の定率ツーリングプラン案と今後の展望

【国交省方針(案)2021年3月24日】

時期 2022年4〜11月、土日・祝日のみ

条件 ETC搭載車両、100㎞以上走行の場合

割引 普通車の半額(現行二輪車料金の37.5%引き)

申込み インターネット上での事前登録・申込み

【二輪業界団体の要望】

・「100㎞以上走行の場合」の撤廃や緩和

・プラン導入時期の前倒し

 

これまで同様の、エリア内なら乗り放題となる定額ツーリングプランも並行して行われるというが、走行距離や用途によっては通常の休日割引等を利用したほうが安くなる場合もあるため、どれだけ需要を満たせるのか一抹の不安もある。利用者が増えなければ、ネクスコが心配する料金徴収額も増えない。

ロングツーリングや宿泊ツーリングなどヘビーユーザー向けの定額ツーリングプランと、主に日帰りツーリングを楽しむライトユーザーがしっかり使い分けできるように、100㎞超といった条件は極力取っ払って運用すべきだろう。そうすれば、これまでの定額ツーリングプランに魅力を感じていなかった近場の日帰りツーリング層や下道走行をメインとするETCに魅力を感じていなかった層の需要も喚起できるだろう。

 いずれにせよ、国交省やネクスコは定率ツーリングプランの利用率を指標に用いる。現在、高速道路を利用しているバイクの8割弱がETCを装着しているというが、バイク全体(126㏄以上)で見れば1割程度にすぎないとも言う。ETC車載器の購入助成キャンペーンは各地で実施されているので、ぜひ検索してほしい。

ツーリングプランをしっかり利用することが、高速料金問題のゴールである「車種区分の独立」につながると信じ、ライダーが一丸となって独立に向けて戦っていくべきだ。

【キーパーソンの声】高速料金問題のゴールは、「二輪車の料金区分の独立」と「普通車の半額」の実現

 「現在、2つのツーリングプランの話が進んでいます。ひとつは、今シーズンの指定エリア内定額ツーリングプランで、過去に実施してきた内容の改良版となる見込みです。ただし、新型コロナウィルスの影響によって県をまたぐ移動の自粛が呼びかけられるなどすると開始が遅れる可能性もあります。
 もうひとつは、来年の4月から開始予定と発表された定率ツーリングプランです。これが実現すれば、初めて、軽自動車と二輪車の料金がエリアを限定することなく実質的に差がつくことになります。国土交通省や各高速道路会社にとっては大きな一歩を踏み出したものと思います。
 現在のところ、利用には様々な条件が提示されていますが、「導入時期はより早く」、「使用条件は、より多くのライダーが利用できる」ように関係各所に要望しています。自由民主党の政務調査会「二輪車問題対策プロジェクトチーム(逢沢一郎 座長)」の議員の皆さまがライダーの立場をしっかり理解してくれ、窓口となって国交省や高速道路会社と実施案を検討しています。
 高速料金問題のゴールは、「二輪車の料金区分の独立」と「普通車の半額」の実現です。定率のツーリングプランは、ゴールに向かう道筋にあたるもので、まさに一歩前進することだと思います。導入が実現したら、より多くのライダーに利用して頂きたいですし、利用が拡大すれば、「二輪車を値下げしても、利用が拡大して料金収入が減らない」とすることができ、ゴールの実現へと一層近づくと思います。これからもライダーの方と共に喜べる成果を目指して活動してまいります。」

全国オートバイ協同組合連合会 会長 大村直幸さん
第2代会長として二輪団体、与野党、中央官庁等との活動を通してツーリングプラ ンの導入、ETC車載器購入助成、AT小型限定免許取得簡便化等を実現した

全国オートバイ協同組合連合会(通称AJ)とは?
大阪オートバイ事業協同組合を作った吉田純一氏(現日本二輪車文化協会長)が、1992年に全国各地のオートバイ販売店組合と作った協同組合連合会

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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