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【Thinking Time】②高校生に聞く「 バイクってどう?」

*BikeJIN vol.212(2020年10月号)より抜粋

埼玉県の高校生1640人へのアンケートから見えてきたバイクのイメージとは?
ダサい? かっこいい? 楽しい? つまらない?
回答から見えてきたのは、首都圏に位置する埼玉県でさえ求められている
生活の足としてのバイク、その潜在的なニーズだった

「原付・自動二輪車の 免許取得、乗車に 興味がありますか?」

 埼玉県の「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」では、学校関係者や有識者が三ない運動や交通安全教育について1年以上にわたって議論したが、当事者である高校生はバイクについてどう考えているのか?「当事者である生徒の声を聞くべきである」と行われたのが高校生を対象とした「埼玉県高校生の原付・自動二輪車に関する意識調査」(2017年調べ)だ。「今の高校生はバイクについてどう考えているのか?」を知るための調査であるが、その答えは明快で、半数以上はバイクに「興味がない」というものだった。ただし、38年間も続けられてきた三ない運動下にあって42%もの生徒が「興味がある」と答えている点については掘り下げていく必要があるはずだ。

バイクに「興味がない」と答えた生徒が50%と半数を占めた。38年間も三ない運動を続けてきた割には少ない? 一方、バイクに興味のある生徒は42%にも達した。なぜバイクに興味があるのか、その理由を知る必要があるだろう

「あなたが原付、自動二輪車に持つイメージは?」

次に、原付と自動二輪車のイメージについては、原付が圧倒的にネガティブだったのに対し、自動二輪車は意外なほどにポジティブだった。生活の足としては便利でも、ダサいしできれば乗りたくない原付と、価格からしてハードルは高いけど明るく好感の持てる自動二輪車といったところか。実際に免許が取れる、乗れるようになった今に実施すればまた回答も変わってくるのかもしれないが、三ない運動下の高校生はバイクをこのように見ていた。

あなたが「原付」に持つイメージは?
原付に対するイメージはかなり悪いようだ。これでは電動アシスト自転車に負けてしまうのもうなずける。中でも「つまらない」「暗い」というワードは悲しすぎる。メーカーにはぜひ楽しく明るい原付を作ってほしい

あなたが「自動二輪車」に持つイメージは?
自動二輪車については意外にもポジティブ。趣味性に関わるポジティブワードを見ると“陽キャ”“リア充”の姿が見えてくる。若年層の中でバイクがコミュニケーションツールとして認識されているのも納得だ

「あなた自身にとって、原付・自動二輪車を利用することは必要ですか?」

また、バイクに乗ることの必要性に関する回答からは埼玉県の高校生の日常生活が垣間見えている。最も支持された「生活の行動範囲が広がるから」という点は、自転車との大きな違いであり、今も昔も変わらないといったところだが、注目すべきは「通学の負担軽減」「アルバイトでの活用」といった点だ。
 
埼玉県は秩父地方の中山間地を除けば平地の多い内陸県であり、公共交通網も発達している。なのに、なぜこのような意見が多数派を占めるのか? 実は、交通安全講習に行くたびに参加生徒に聞いているのだが、「10㎞離れた友達の家にまっすぐ行けない」「アルバイト先まで電車で片道1000円も掛かるのでバイクで行きたい」といった声がとても多いことに驚く。
 
埼玉県内のバイク通学に関しては、秩父エリアと定時制クラス以外はほぼ許可されていないが、他の地域でも「許可されてはいないがバイク通学をすることで通学時間や交通費といった負担を軽減したい」と考えている生徒が一定数いるようだ。さいたま市といった都心部はともかく、西部や北部ではバイク移動に関する潜在需要は相当にあるのではないだろうか。
 
近年叫ばれているQOL(クオリティオブライフ=個人の生活の質)の向上は高校生の日常生活にも考慮されるべきだろう。三ない運動下でも、高校生はバイクという移動手段を求めている。このアンケートからは、そうした潜在的なニーズが垣間見えてくる。

過半数を占める「必要はない」ではなく、2017年当時の苛烈な三ない運動のなかバイクの必要性を感じている生徒が31%もいることに注目すべき。

「現時点」「在学中」に必要と答えた理由の中では「生活の行動範囲が広がるから」という理由が最も多く、次いで「通学の負担軽減」「アルバイトでの活用」と続く。全国的にも平地の多い埼玉県では移動に不便を感じている生徒も一定数いるようだ

少子高齢化時代による 生徒・家庭の負担を考える

三ない運動の功罪をここですべて説明することはできないが、結果的に生徒の命を守ることにつながったという功績の裏側で、交通安全教育の早期浸透を阻み、その存在が大人に利用されてきたという一面があるのも事実だ。
 2012年、全国高等学校PTA連合会が全国的な運動をやめ、交通安全教育への転換を示唆してからはや8年が経とうとしているが多くの都道府県で各学校の判断に委ねられてしまった現状は、教育現場へのただの丸投げだ。

公共交通の衰退、学校の統廃合による通学距離・時間の延長は生徒本人のみならず、クルマで送迎をしなければならない、通学費用が家計を圧迫しているなど家庭の負担にものしかかっている(交通費を補助している自治体も増えている)。埼玉県の東部・西部地区で話を聞くと、平野部の広い埼玉県で高校生が移動することの不便さ、大変さも伝わってきた。
 移動手段としてバイクを必要としている子供たち、そして親御さんがいること。生徒が免許を取り、バイクで安全に移動することの必要性を理解し、そのために何ができるのかを真剣に考える時が来ている。

次の記事では、実際に高校生への交通安全教育早期浸透に取り組む埼玉県の実例を紹介しよう。

Writer 田中淳磨(輪)さん

二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む
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