今はまだ、紙の出版物が本の主流で、書店に行けば
いろんな出会いがある。でも電子化は着実に進んでいる
地図はその流れに先んじて「ナビ」化が進んできたが
かろうじて残る紙地図に未来はあるのだろうか
「地図出版」ってしかし、いつまで続くんだろう?
こんにちは! 今年もなんだかんだで年末が迫ってきた感がありますね。早過ぎるぜ!
われわれの仕事、昔は下半期の方が圧倒的に忙しくて、冗談交じりに自分たちのことを「季節労働者」なんて呼んだりしてましたが(さすがに上半期も働いてはいましたよ)、近年は人も減っちゃって、そんな仕事の波もほぼなくなりました(くまなく忙しい)。それが今年はコロナの影響でどうなるかな〜と思ってたら、案外変わらず……もちろん、仕事があるのはありがたいことです。ただ、ここでふと思うわけです。「地図出版」ってしかし、いつまで続くんだろう?
「紙地図」は続くのか
突然の重たげなお話。こんな話を他社さんの雑誌でしていいのかしら……まあ、大丈夫でしょう(楽観的)。
皆さんご存じの通り、紙地図というのは「カーナビの登場」により大打撃を受け、「スマホの登場」により風前の灯となり久しく、もはや絶滅危惧種にでも指定して保護すべきレベルです(それは言い過ぎだろう)。
そもそも出版市場というのがこの20年間、縮小し続けています。それでも昨年は前年比「微増」に転じたそうです。しかしその要因はあくまで電子出版の伸びによるもので、2019年、電子出版が前年比23・9%増だったのに対し、紙は前年比4・3%減という数字。
この図を見ても分かる通り、電子出版は全体の2割に達しています。多いとみるか、少ないとみるかは別として、そこまで伸びてきているということです。私自身、まだ紙で買うことの方が多いですが、ここ2・3年、時々電子版でも本を買うようになってきました。電子の方が、場所取らないし、暗い場所でも読めるし、拡大もできるし、などなどメリットは結構ありますよね。ツーリングマップルも電子書籍を出してるわけですが、電子版ならツーリング先で「中部北陸版持ってきたつもりが関西版だった〜(涙)」なんていうあるあるも防げるわけです。
電子が伸びればOK?
さて、「紙が減っても電子が伸びてるんなら収益的には結果オーライじゃん?」って思われるかもしれませんが、そもそも電子が今伸びてる主要因はコミックジャンルみたいですからね。われわれ今のところコミック出版してませんからね(してみたい)……。
それに、電子の伸び分が「純増」ならなんら問題ないのですが、実情は紙から電子への「移行」なので、これは問題ありなのです。
現状比率は、電子2割・紙8割ですが、これが、3対7、4対6、5対5、と推移していくと、紙の「採算性」がどんどん低くなります。5万部作るのと1万部作るのでは、1部当たりの原価がかなり違うのです。スケールメリットが活かせなくなるんですね。これはすべてのモノづくり共通だと思いますが、原価が赤字ラインに乗ってくると、値上げせざるを得ません。しかし値上げをすれば売れなくなるリスクも上がります。「じゃあ安い電子版を買おう」とみんなが移行してくれれば良いのですが「そこまでして買わなくてもいいか」と思う人も多いですよね。デバイスを持っていない人だっているでしょう。厳しさは増す一方です。やがて紙はお荷物状態、作るほど赤字に……。「じゃあしょうがない、もう紙やめちまおう」。そして電子だけになります。しかし紙の収益がごっそりなくなるので、新たな本に使う原資も減ります。すると満足いくコンテンツがつくれなくなり、維持不能、ついにあえなく廃刊。
そんなケースが、まああくまで例え話ですよ、ですけど定期的に出版しているものだと、可能性としては十分考えられますよね。ツーリングマップル、毎年出版してますけど、ね。
それでも僕らは紙の地図を作る
で、俺たちどうするよって話なんですが。そういう世界に早々に見切りをつけて、サヨナラする人も少なくないです。「なあ、オレ会社辞めるわ」「あらそう」ってね。慣れたもんですよ(嘘。顔がひきつってる)。
実は私も数年前まで「いずれ紙地図はなくなっちゃうんだろなあ」と漠然と思いこんでいたわけです。だってもうね、辛いんですよ。落ちるばかりの数字を見るのが。減らされる予算の中で頑張って中身を良くしても、焼け石に水なんですから。アカルイミライなんて信じられないんです。
でもここ最近はそういう考えを改め始めました。ツーリングマップルを担当してるとね「いや、やっぱ紙、いるでしょ!」って。
今さら紙のメリットをここで書き連ねるのも気恥ずかしいですが、好きに書き込める、電池がいらない、乱暴に扱っても大丈夫、友達に貸せる、旅先でサマになる、などなどありますけど、やっぱり最終的に「自分のモノとして手元に残る」。これは大きいんじゃないかなと思ってます。
なにかとエコが強調されて、「所有」に対する否定感情は年々大きくなっている昨今、でもなにもかもデジタルに、シェアに、となっていくと、失われる(本当は大切にしたい)価値観もあるのではないでしょうか。
子どもや孫の世代が、いつか自分の本棚にある書き込み満載の地図を見て、目を輝かせるシーンを想像してみてください。これ、素敵すぎませんか?
そういうわけで、紙の地図が売れるよう、これからなりふり構わずあれこれ頑張ってみようと思っている今日この頃です。
日記かよ!
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みんなのツーリングマップルOPEN!!
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