会社をリタイアしたあともバイクライフを楽しめる環境をみんなで作らないといけません
40代、50代、そして60代も含めて、いまバイクを楽しんでいるその層の方々はもちろん大人ですから、ご自分で、ご自分なりのバイクライフをそれぞれのやり方で満喫されているとは思います。
とはいえ、50代の後半になると、会社をリタイアした後の人生設計や、健康状態なども気になりはじめ、「いつまでバイクに乗れるんだろう……」と漠然と思い始めるものです。いま61歳のボクも、たまにそんなことを考えます。
リタイアして、当然、収入が少なくなり、体力も落ちてきて、いま乗っている大きくて重いバイクを扱いづらくなったとしたらどうしたらいいんだろう。バイクにはずっと乗り続けたい、でも買い替えるにはお金の不安がある、そんな人も沢山いらっしゃるんだろうと思います。
さらに、家族も含めた周囲の人には、「もういい歳なんだから、バイクなんて止めたらいいのに」なんていう言葉も浴びせられるでしょう。そして実際、もう潮時かなと、バイクに乗り続けるのをあきらめる方もいらしゃるはずです。
でも、いま実際にバイクを楽しんでいて、バイク業界にさまざまな形で金銭的貢献もしてくださっているそういう方々が、加齢を理由にバイクをドンドン降り始めたらと思うと、ボクはとても寂しく感じ、そしてゾッとします。
3ない運動や校則などで、バイクと接するのを禁じられて育った若い人たちが、なにかのきっかけでバイクに興味を抱いてライダーになることももちろんあります。だって、バイクはとっても楽しく、素晴らしい乗り物だから。しかし、そんな人はほんの少しで、大半の人たちは自分のライフスタイルの中に「バイク」の文字がないまま人生を過ごすのです。この、日本では。
タイトルに「人生100年時代」と書きましたが、昔は60代になると「そろそろバイクなんて止めたら」と言われていたのが大きく様変わり。60代でバイクを楽しんでいると、「いい趣味をお持ちですね」とまで言われるような時代になりました。60代でリタイアしても、100歳まではあと40年。趣味が生きがいになる時代に突入しているんです。
バイクは自分の年代ごとに、楽しみ方を選ぶことができます。とんでもない加速を楽しめるスーパースポーツが楽しい時期もありますし、逆にスピードではなくエンジンの鼓動や味わいを愛でたい時期もあるでしょう。大きい・小さい、重い・軽いといったバイクの特性に合わせて、いま自分が楽しめるバイクをチョイスしながら、ずっとバクライフを継続していく、そんな時代がやってきているのです。
ボクが思うに、そういう新たな時代を迎えたのに、バイクメーカーの施策はとにかく新規参入ユーザーに向けたものが大半で、いまバイクを楽しんでいて、あと10年、20年楽しみ続けたいと思っているライダーはほっとかれているのがどうにも疑問で、やるせない気持ちです。
日高委員長の発言の「既存ユーザーの二輪車利用環境の改善への取り組みが非常に重要と考えている」というのであれば、既存の熟年ライダーに対する施策がもっとあってしかるべきじゃないかと思っています。
たとえば、50代あるいは60代のライダーがバイクを乗り換えるときの優遇処置だったり、50代以上だけが参加できるライディングスクールだったり、用品店での購入割引だったり、とにかくいまバイクに乗っている人が、1日でも長くバイクを楽しめるような負担軽減の施策を講じてほしい。切にそう思っています。
若い人たちを取り込まないと、バイク業界の未来はないというのはもちろんその通りですから否定はしませんが、そこだけに注力すると今の大事なユーザーを置き去りにしてしまうかもしれないと、我々メディアも含め、今こそ真剣に考えなければいけない時だと思います。
BikeJINでは、熟年ライダーがずっとバイクに乗り続けるためのノウハウなどを過去2回、2018年2月号と7月号で特集しています。いつまでもバイクに乗り続けたいと思っている方は参考にしてみてください。