環境性能が重要な時代に不可欠な可変バルブ機構
BMWが新たに採用した「シフトカムテクノロジー」とは、可変バルブタイミング機構だ。可変バルブとは何かを説明する前に、まずはバルブの役割を見ていこう。
BMWが導入した可変バルブ機構は「シフトカム」という名が示すとおり
カムシャフトが移行してカムを切り替えるものだ
どのようにしてカムが切り替わるのか、その仕組みを見ていこう
BMWが新たに採用した「シフトカムテクノロジー」とは、可変バルブタイミング機構だ。可変バルブとは何かを説明する前に、まずはバルブの役割を見ていこう。
バルブ(弁)とは、燃焼室の“フタ”となるパーツで、ピストンと連動して開閉している。混合気を燃焼室へ送り込むための「吸気バルブ」と、燃焼後のガスを排出する「排気バルブ」があり、ボクサーエンジンではそれぞれにバルブが2つずつ設けられている。
このバルブを開閉するためのパーツが「カムシャフト」という金属棒だ。このカムシャフトに設けられたカム山によって、バルブが開くタイミングやリフト量(フタが開いている時間)が決定されている。通常、バルブタイミングやリフト量は固定されているが、エンジン特性を効率化するため、これを変更できるようにしたのが可変バルブタイミング機構だ。
実は可変バルブ機構そのものは目新しいものではなく、1980年代には実用化されている。また、バルブの開閉タイミングや時間を変更するのではなく、バルブの開閉を停止させたり、シリンダーそのものを停止させる機構もある。
BMWが今回採用したシフトカムは、2つの吸気バルブの開閉タイミングと時間を変更するタイプで、5000回転を超えたとき、あるいはスロットルを全開にしたときに切り替わる。バルブタイミングを変える仕組みは、通常は固定されているカムシャフトをシフト(移動)させるというシンプルな方法で実現している。
新しいボクサーエンジンのカムシャフトには「低速カム」と「高速カム」の2つがあり、5000回転までは低速カム、それ以上あるいはスロットル全開時に高速カムが使用される。低速カム稼働時に5000回転を超える、あるいはスロットルが全開になるとカムシャフトの下部に設置されたアクチュエーターが作動し、カムシャフトゲートピンを押し出す。このピンはカムシャフトに螺旋状に刻まれた溝(カムシャフトゲート)をなぞるため、カムシャフトがシフトするというシンプルな構造だ。
可変バルブタイミングは、混合気をより効率的に燃焼させるための機構で、高出力と燃費向上に貢献する技術だ。年々厳しくなる排ガス規制に対応するために不可欠になりつつあり、近年ではドゥカティ・ムルティストラーダ1200(1260)やスズキ・GSX?R1000も可変バルブ機構を採用している。BMWとは方式が異なるものの目的は同じで、高出力と低燃費を意図するものだ。
今後、可変バルブ機構はますます重要な技術として多くのモデルに採用されていくだろう。
1.燃焼効率を高められる
2.より高い出力を得られる
3.排気ガスをクリーンにできる
BMWシフトカムは吸気側のみ
BMWシフトカムテクノロジーでは吸気側にのみ可変バルブ機構が採用される。低速カム稼働時、2本の吸気バルブは同期しておらず個別のタイミングで開閉する。これにより混合気に渦を発生させて濃度を平均化し、燃焼効率を高めている