“タイヤが滑るかも……”と不安に付きまとわれて
ずっと緊張して走っていたら、楽しくないうえにスゴく疲れる
冬のライディングに立ちはだかる敵を、ライテクで乗り越えよう!
忘れず、面倒がらず、走るたびに必ず温める
いまどきのタイヤは非常にグリップ性能が高い。なかでもスポーツツーリングタイヤは、路面が冷えていたり濡れていても、性能を発揮してくれる……が、それを過信するのは考えモノだ。
確かにハイグリップと比べると 温度依存が少ないのは事実だが、やはりタイヤは内部から温まらないと、構造的にグリップ性能をフルに引き出すことができない。だから気温も路面温度も低い冬場は“タイヤの温め”が重要なのだ。
とはいえ、レースのようにタイヤウォーマーを巻くわけにもいかない。しかし、意図的に走ってタイヤをツブして揉めば、内部からジンワリと温めることができる。
やり方は下に記したように簡単。加速で後輪を温め、減速で前輪を温める。直線路で周囲の安全に十分注意して行おう。気温が10度以下で、曇っていて直射日光が路面に当たっていないような場合は、最低でも20分くらいは“温め走り”を意識すること。
ちなみに「峠に来るまで、高速道路を1時間以上も走って来たから大丈夫」と考える人もいるようだが、低い気温の中を一定速で風を切って走っていると、ほとんどタイヤの温度は上がらない。また左右にローリングしてタイヤのトレッド面を接地させる方法もオススメしない。コレだと温まる前にスリップして転倒する危険が高いからだ。とにかく“ツブして内部から温める”ことを徹底しよう。
ところが、そうやってキチンと温めたタイヤも、少し停車している間に一気に冷えてしまう。だから休息後は温め直しを忘れずに。そして休息中は、可能な限り日なたにバイクを停めて、タイヤに日光を当てておこう。それだけでもタイヤ温度が下がるのを(少しだけ)抑えることができる。
あとは路面が冷えていたり、滑りやすい場所を、なるべく避けて走る。早期発見や危険回避のためにも、スピードは控えめに!
低回転でスロットルを開け、リヤタイヤをツブす
3速または4速で、ノッキングしないギリギリの低回転からスロットルを素早く大きく開ける。すると穏やかに加速しながら、エンジンの駆動力が後輪に伝わって、タイヤがグゥ〜ッとツブれる。ユックリ開けると十分にツブれないし、低いギヤだと急加速したり、ホイールスピンしてしまうので注意
ジワッとブレーキをかけ、フロントタイヤをツブいす
加速で後輪をツブし、ある程度スピードが乗ったら、今度はフロントブレーキをジワッとかけて前輪をツブす。ガツンとかけるとロックの危険があるが、反対にあまりジワジワと探るようにかけるとタイヤがツブれてくれない。速度が落ちたら加速で後輪温め→ブレーキで前輪温め、を繰り返そう
気温が下がるとタイヤの空気圧も低くなる
空気は温度が下がると収縮するため、タイヤの空気圧も低くなる。そこでツーリングに出発する前は、朝イチに必ず空気圧をチェックする(指定空気圧は冷間時が基準なので、走り出す前に測ること)。空気圧の低すぎは論外だが、指定より高すぎてもグリップ力を発揮できないので、「どうせ抜けるから」と高めに入れたりしないように!
日常的に使えるよう、安価なタイプでいいのでエアゲージを用意しよう
休憩している間にタイヤは想像以上に冷えている
冬のライディングでタイヤの温めは基本中の基本だが、じつはキチンと温めても止まった瞬間から急速に冷えていくことを忘れずに。ホンの一服する間はもちろん、食事などで1時間も停車したら、朝イチの“ドン冷え”に戻っていると思って間違いない。だから休息後は、“タイヤの温め”を必ず最初からやり直すことが肝心だ
タイヤの温度は、止まった瞬間から驚くほど急速に下がっていく
滑り止めの砂
クルマの滑り止めがバイクのスリップを誘発
山間部の急坂などに用意されている滑り止めの砂。クルマには有効だが、当然ながらバイクには恐怖の存在でしかない。同様に凍結防止剤(白いツブツブ)も、じつによく滑る。これらは避けて通るしか対処法がない
滑る場所を察知して細心の注意で走る
基本的に路肩は危険。落ち葉やゴミが堆積しやすく、冬は流水や霜などで濡れると日中も乾かずに滑りやすいからだ。金属製のフタや道路の下を風が抜ける橋なども冷えるので注意!