2017年10月で創刊15周年のBikeJIN。ワタクシNomが編集長として加わったのは、創刊した翌年の1月、Vol.3からでした。
どんな本もそうだと思いますが、創刊したての雑誌の編集部というのはあらゆることが混とんとした状態にあって、それが月日を重ねるごとにある一定の方向に落ち着いてくるもの。創刊して2冊本が出たばかりでしたから、編集長とは言っても中途参加のボクはこの本が目指しているものは何かを探りながら日々の業務をこなしていたように思います。
そんな培倶人黎明期から、2代目編集長のワディにバトンを渡すまでの6年間にはさまざまな出来事がありました。いまとなってはすべていい思い出ですが、当時は何日も何日も悩んだり、決断した後になって間違いだったのではと思ったりと、苦しい日々もありました。もちろん、それらを上回る楽しいこともイッパイあったんですけどね。
BikeJINウェブサイトがリニューアルして、BikeJIN Membersという新しい会員組織を作ることを決めたとき、会員の方々だけに楽しんでいただけるコンテンツを用意しようと思い立ち、ボクが編集長だった頃に起こったアレコレを綴ってみました。
今やバックナンバーも手に入らない昔の話ですが、当時からの読者の会員の方には懐かしがってもらえたら、そして当時を知らない会員の方には創刊当時の培倶人の息吹みたいなものを感じてもらえたら嬉しいです。
バイクのある生活の楽しさを伝えることに重きを置く「培倶人」
本誌の創刊当時、時代の雰囲気は「きっちり」から「ゆる~い」感じに移りつつありました。したがって本誌の編集方針も、モノをしっかり詳しく紹介するというよりも、雰囲気やイメージを重視して、バイクのある生活の楽しさを伝えることに重きを置いていたのです(それはいまでも変わりませんが……)。
ということもあって、ツーリング記事の構成でもメインは風景だったり、人だったり、食べ物だったり……。人からよく言われたことは「培倶人って、バイクよりも食べ物のほうが写真が大きいんですね」。
ともあれ、いままでのバイク誌とは大きく異なる本を目指していた本誌でしたから、それはボクも良しとしていました。ただ、ツーリング記事に使用したバイクについて、スペックはおろか価格まで掲載していないことがあるのに唖然としました。
またしても大反対に......
本誌の編集長になる前は、本格派正統的バイク誌(?)の編集長をしていて、本誌とは真逆にどこまで詳細にスペック等のデータを用いてバイクを魅力的に紹介するかに心血を注いできていただけに、なぜこれでいいのか理解できなかったし、何より未完成のものを読者に提供しているような「気持ち悪さ」が常につきまとっていました。
そこで、バイクのキャプションでもいいから、価格と最低限のスペックだけは入れるようにしようと提案したのですが、またしてもスタッフたちは大反対!即物的な数字が入ると全体の雰囲気が壊れる、いまどきスペックなんて誰も気にしない(いまはまさにそうなっていますよね)、それを入れるとなるとバイクの写真を必要以上に大きくしなくちゃいけなくなる、培倶人が培倶人じゃなくなっちゃうなど、クーデター前夜のような雰囲気になってしまったのです。
初代編集長の意地「使ってみました旅アイテム」
そこまで事を荒立てるつもりもなかったので、いったんはおとなしく先輩2人の言い分を聞くことにしましたが、依然として気持ち悪さが消えなかったので、なんとか解消しようと考えた結果、ツーリングで使用したバイクやウエア、グッズを別ページで、実際に使用したレポーターがしっかり紹介する「使ってみました旅アイテム」という企画をVol.7(2003年9月号)から掲載することにしました。
この企画のおかげで、いままではバイクが米粒みたいにしか紹介してくれないと(陰では)不満を言っていたバイクメーカー、そしてウエアやパーツのメーカーも、本誌に強い興味を抱いてくれるようになったと記憶しています。